朝井リョウさんらしい青春モノの作品となっています。女子の競技というイメージが強いチアリーディングですが、男子が競技した際の力強さが、文章からも伝わってきます。
朝井リョウさんの出身校である早稲田大学の男子チアリーディングチームSHOCKERSがモデルとなっています。本作は、映画化もされているため、小説が苦手な方も、是非映画と合わせて読んでみることをすすめします。
『チア男子‼』の作品情報
題名 | 『チア男子!!』 |
---|---|
著者 | 朝井リョウ |
発行所 | 株式会社集英社 |
発行日 | 2013年2月25日 |
ページ数 | 486頁 |
朝井リョウ・作者情報
1989(平成元)年、岐阜県生れ。早稲田大学文化構想学部卒業。2009年『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。2011年『チア男子!!』で高校生が選ぶ天竜文学賞、2013年『何者』で直木賞、 2014年『世界地図の下書き』で坪田譲治文学賞を受賞。ほかの著書に『もういちど生まれる』『スペードの3』『武道館』『世にも奇妙な君物語』『死にがいを求めて生きているの』などがある。
https://www.shinchosha.co.jp/writer/4436/
あらすじ(ネタバレなし)
柔道一家に生まれた晴希だったが、ケガを理由に柔道を辞めた。そんな時、幼馴染みの一馬からチアリーディングをやらないかと誘われる。女子のやるものという印象が強いチアリーディングに、最初は難色を示す晴希だったが、一馬の熱意に負け、チアリーディングを始めることを決意する。
チアリーディング経験のないメンバーたちが、苦戦しながらも団結し、全国大会優勝を目指して戦う青春小説。
登場人物紹介
- 晴希(はるき):柔道一家に生まれ、柔道一筋で生きてきたが、ケガを理由に柔道を辞め、チアリーディングを始める。
- 一馬(かずま):晴希の幼馴染。ずっと柔道を習っており、腕前もあったが、晴希を追うように柔道を辞め、チアリーディングを始めることを決意する。
書き出し紹介
空が青いから、制服のシャツの白色が余計にまぶしく見える。応援席が騒がしい。
ストーリー(ネタバレあり)
この先、ネタバレがあります。ご注意ください。ネタバレ部分は赤字で表記します。
晴希の家は、柔道一家で、両親も姉も幼い頃から柔道をやっていて、家は柔道の道場を経営していた。そんな晴希にとってもはや柔道は義務のようになっていた。だから、ケガをし、しばらく柔道ができなくなったときはやっと解放されると思った。ケガが治ってもなかなか柔道に復帰できず、自分の限界を感じた晴希はついに柔道を引退することを決意する。それを幼馴染みで柔道仲間であった一馬に相談すると、自分も柔道を辞めると宣言された。そして、一緒にチアリーディングチームを作らないかと話を持ち掛けられた。
初めは乗り気でなかった晴希だったが、一馬の話を聞いていくうちに興味を持ち、チアリーディングを始めることを決めた。それからは、2人でチームメンバーの募集に尽力した。初めになぜか2人についてきた変わり者の溝口が仲間に加わった。そして、よくミーティングに使っていた定食屋の常連だったぽっちゃりのトンがメンバーに加わった。最低でも7人はメンバーを集めたいという一馬の声で、4人は大学のサークルの飲み会に忍び込んで、チアリーディングチームの勧誘を行った。効果がないかと思われた勧誘だったが、新歓でも目立っていた運動神経抜群のイチローと負けず嫌いの弦が新しくチームに入ってくれることになった。勧誘を続ける一馬らは、大学の体操の授業に忍び込み、調査をしていると、ひと際体操が上手い男を見つけた。彼は翔といい経験もあったが、チアリーディングにトラウマをもっており、メンバーに引き入れるのは簡単ではなかった。しかし必死の説得により、彼らの熱意を感じ取り、最後にはチームに入ることを決めてくれた。
ついにメンバーがそろったチームは、チーム名を「BRAKERS」と定め、本格的に活動を始めた。運動経験があり、身体能力の高いメンバーは多かったが、翔以外チア経験がない中で、チアを1から始めるのは簡単なことではなかった。しかし、彼らは一致団結し、必死に練習を取り組む中で段々と演技は形になっていった。そんなある日、女子の強豪チアのチームと合同練習を行うことになった。特訓をしてから望んだ練習だったが、強豪チームということもあり、晴希たちの技は足元にも及ばなかった。馬鹿にされて落ち込む一馬たちだったが、思いがけぬ収穫があり、女子チームのOGであった高城が、BRAKERSのコーチをつとめてくれることが決まった。
そんな中、メンバーも順調に増え、全国大会出場の条件である16名が揃った。やっとスタートラインに立ったBRAKERSは全国大会出場に向けて、これまで以上に力を入れ、取り組んでいく。そして迎えた全国大会予選の日、BRAKERSは息を合わせることが出来ず、ミスもあった。それでもギリギリ予選は突破することが出来、BRAKERSは全国大会に出場できることが決まった。
予選でのミスを引きずる晴希たちに、コーチは的確なアドバイスをし、それぞれに一冊づつノートを渡し、不安等心に浮かぶことを毎日ノートに書き込むように言った。これにより、BRAKERSの目標は一気に定まり、全国大会に向け、一丸となって、練習を行った。そして迎えた全国大会当日、コーチはそれぞれが書いたノートをみんなで交換し、読み合うようにと言った。それぞれの気持ちを理解し、舞台に立ったBRAKERSにもう迷いはなく、全力で踊り、声を出す彼らには、楽しいという気持ちしかなかった。
まとめ・感想
朝井リョウさんらしい青春モノの作品です。朝井リョウさんの青春モノの作品には、『桐島部活やめるってよ』等もありますが、この作品は、他の作品よりも考えさせられる部分は少なく、大学生男子の勢いや情熱を感じられる爽快な作品となっています。朝井リョウさんの母校である早稲田大学の男子チアチーム「SHOCKERS」がモデルになったと言われています。
この作品は、2019年に映画化もされており、今大注目の作品となっています。朝井リョウさんならではのリアルな心情表現に、読みながら心を動かされてしまうこと間違いなしです。是非、青春真っただ中の高校生や大学生に読んで欲しい作品です。
お付き合いありがとうございました。