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『天上の飲み物』のあらすじと感想|ネタバレあり

『天上の飲み物』の作品情報

題名『天上の飲み物』
著者三浦しをん(みうらしをん)
発行所 Amazon Services International, Inc.
ページ数17頁

三浦しをん・作者情報

小説家。『舟を編む』や『風が強く吹いている』等の人気作品を手がける。中でも、『舟を編む』は、俳優の松田龍平さん主演で映画化され、話題を呼んだ。

この他にも『まほろ駅前多田便利軒』等の作品があり、シリーズ化され注目されている。

あらすじ(ネタバレなし)

人間に交じって生活する後藤次郎の正体は、400歳を超える年齢の吸血鬼だった。しかし、次郎はこの事実をだれにもバレることなく生活している。長い長い人生を少しでも有意義に過ごそうと画策する次郎は、体質改善を試み、人間界に馴染めるよう生活しているうちに、「ワイン」にハマってしまったのだった。

そんな次郎は、中でも日本の甲州産のワインに目がなく、日本で生活することを決めた。そこで次郎が一目ぼれしたのが、宮村有美だった。有美との交際を始め、結婚も見えてくるかと思われる2人でしたが、次郎には吸血鬼ならではの困難があるのだった。

登場人物紹介

    後藤次郎(ごとうじろう):400歳超の吸血鬼。21歳の大学生として生活している。

    宮村有美(みやむらゆみ):次郎の彼女。家の中と外でのONとOFFが激しい。

書き出し紹介

すでに数えるのも面倒なので、正確なところは定かじゃないが、記憶にあるかぎりでも、かれこれ四百年以上は生きている。

ストーリー(ネタバレあり)

この先、ネタバレがあります。ご注意ください。

主人公の次郎は、400歳超の吸血鬼である。長い長い人生に退屈を感じ、人間に混じって生活するために体質改善に取り組むことを決めた。そのおかげで今はニンニクも十字架も怖くない。

吸血鬼は歳をとらないから、ずっと同じ場所にはいられない。恋をして、そこ恋が実っても、相手は自分を残して死んでしまうから、結局ひとりぼっちになってしまう。そして傷ついて恋なんてしないと誓いながら、また30年ほど経つと恋に落ちているのだ。

今、次郎は日本にいる。体質改善中に出会ったワインという飲み物が気に入り、甲州産のワインを飲むために日本に住むことを決めたのだった。元々は山梨に滞在し、ワインにまみれて生活する予定だったのだが、ここでも恋に落ちてしまい、東京の会社員である宮村有美と付き合うため、東京で暮らしている。

東京では、21歳大学生として過ごしており、酒屋でアルバイトをしながら生活している。一目惚れした有美も近くに住んでおり、次郎はよく有美の家で、一緒に幸せな時を過ごしていた。

そんな有美は、家の外でのONとOFFの切り替えが激しいタイプだ。外では細身のスーツに身を包み、しっかりとキメているが、家の中ではだらしない格好でお酒を飲んでいる。そんな有美の様子が今日はおかしい。話を聞いてみると、会社で、結婚する女の子があとをたたないのだという。

それを聞いて次郎の心は痛んだ。歳をとらない次郎は有美と結婚することはできない。唯一方法があるとすれば、吸血鬼の血を与え、有美を吸血鬼の一族に迎え入れ、共に長い長い人生を歩むことなのだ。

次郎は、有美に血を与え、吸血鬼の一族に迎え入れようかと考えた。しかし、有美と過ごすうちに、終わりがあるからこそすべては素晴らしいのだと気づく。そして、終わりがあるからこそ輝く生命そのものである人間に、恋心を抱くのだと分かった。そして、残された大切な時間を有美と過ごそうと心に誓うのだった。

まとめ・感想

だらしない有美と、心の優しい次郎のユーモラスな描写に、実際に2人が実在するかのように感じてしまいました。

命の形が違う吸血鬼と人間の、終わりの見えている恋に、筆者まで切ない気持ちになりました。

短編小説ながらも、笑いあり涙ありの物語です。茶目っ気のある2人の様子に温かい気持ちになること間違いなしの作品です。

お付き合いありがとうございました。

ABOUT ME
いけだ
読書家。現役女子大生。物心ついた頃から、本を読んで育つ。 本の読みすぎから、小学生時点で漢字の読みだけは高校生レベルを誇った。 活字は基本的に何でも読むが、中でも小説に目がない。本選びは、タイトルと書き出しを見て、直感的に行う。 無計画に書店をうろつき、本を眺めるのが至福の時。最近、小説をまとめ買いできるようになって、大人を感じている。
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