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『死にがいを求めて生きているの』のあらすじと感想|ネタバレあり

大人気作家朝井リョウさんの最新作です。タイトルから興味をそそられる作品となっています。学園モノや青春モノで知られる朝井リョウさんですが、本作では、また違った朝井リョウさんの作風を見ることが出来ます。

現代の人々の生き方に疑問を投げかけるような内容となっており、考えさせられる1冊です。

『死にがいを求めて生きているの』の作品情報

題名『死にがいを求めて生きているの』
著者朝井リョウ
発行所中央公論新社
発行日2019年3月19日
ページ数480頁
¥1,728
(2019/11/21 11:50:07時点 Amazon調べ-詳細)

朝井リョウ・作者情報

1989(平成元)年、岐阜県生れ。早稲田大学文化構想学部卒業。2009年『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。2011年『チア男子!!』で高校生が選ぶ天竜文学賞、2013年『何者』で直木賞、 2014年『世界地図の下書き』で坪田譲治文学賞を受賞。ほかの著書に『もういちど生まれる』『スペードの3』『武道館』『世にも奇妙な君物語』『死にがいを求めて生きているの』などがある。
https://www.shinchosha.co.jp/writer/4436/

あらすじ(ネタバレなし)

大人しく、まじめな性格の智也と、気が強く、勝負事が大好きな雄介の2人は、性格は異なるのに、幼い頃からずっと仲良しだった。それは中学や高校、大学に進学しても変わらず、2人はいつも一緒にいた。

しかし、ある時雄介は大学を辞め、ある伝説をもとに、一人無人島へと赴こうとする。それぞれの心の葛藤が入り混じる物語です。

登場人物紹介

  • 堀北雄介:幼い頃から勝負事が好きで、気が強い。
  • 南水智也:雄介の幼稚園からの友人で、気が立ちやすい雄介を上手く導いてきた。今は事故により植物状態で入院している。
  • 白石友里子:智也が入院している病院の看護師

書き出し紹介

自動的に、運ばれていく。電車に乗っているのだからそう感じるのは当たり前かもしれない。

ストーリー(ネタバレあり)

この先、ネタバレがあります。ご注意ください。ネタバレ部分は赤字で表記します。

友里子の弟の翔大(しょうた)は、友人の転校が決まってから、目に見えて落ち込んでいた。そんな翔大を母も友里子も心配していた。

そんな友里子は看護師として働く中で、1人の青年が気にかかっていた。その青年の名前は堀北といい、南水智也という植物状態の患者を毎日のように見舞いに来ているのだった。彼は快復の兆しの見えない中も、諦めず毎日彼に語りかけていた。その様子を見て、心を動かされた友里子は、翔大を連れて堀北の元を訪れる。友達がいなくなって落ち込む翔大に堀北は、「どんなに辛くても、また新しい友達ができる。そして、今日がその前日なのかもしれないと思えば辛くない。」と伝えたのだった。

幼い頃から智也と雄介は仲良しだった。気が強く、目立つタイプだった雄介と大人しく真面目な性格の智也は一見、性格が合わないように思われたが、勝負事が好きですぐに熱くなる雄介を智也が上手く中和し、2人はずっと一緒にいた。2人が幼い頃『帝国のルール』という漫画が流行っており、雄介はその漫画のウィンクラー大佐というキャラクターに憧れていた。

そんな仲良しな2人だったが、小学校六年生になると、智也と雄介はクラスが離れてしまった。ある日体育の授業でサッカーをやることになると、対戦相手のチームには智也がいた。その試合の中で、雄介は脚をひねって怪我をしてしまった。その時、雄介は「智也に脚をひっかけられた」と智也を責めた。そんな雄介に対し、いつもは温和な智也が雄介に
対抗し、言い争いになったのだった。

中学に入っても、智也と雄介は仲が良く、同じ学校に通っていた。雄介は、サッカー部に入り、変わらずクラスの中心的存在となっていた。運動が苦手な智也は、水泳だけは得意で、水泳部に入り、部長を務めていた。

2人とも部活だけでなく勉強も得意だったため、高校大学共に順調に進学したが、ある日雄介は大学を辞め、海山伝説という伝説のある無人島に渡航するといいだした。海山伝説とは、元々人類は海族と山族に分かれており、今起きている争いは全てその一族同士の対立に起因しているという説である。しかし、その無人島には渡航規制がかかっており、一般の人は立ち入ることができない。そこを「長老」と呼ばれる人物が人物を選りすぐり、島に導いてくれるというのだ。雄介は、その「長老」の選抜を受けに、大学を辞め、1人出向いて行ったのだった。

島への仲介役を担っている「長老」という人物だが、修行のためのお布施だけを受け取り、実際には選抜等はなく、誰も島へ行くことはできないとの噂があった。その噂を聞いた智也は、雄介を止めようと信者のふりをし、自らも長老の元へ忍び込んだ。

雄介と出会った智也は、長老の言うことはデタラメで、長老は詐欺をしていると伝え、雄介を連れ戻そうとした。しかし、雄介はそれを知ってなおこの場所に来ており、やりたいことも何もない自分の生きがいにするのだと主張した。その中で、智也は今まで誰にも明かさなかったことを白状した。智也の父は、海山伝説の研究者で、智也は海族の人間、雄介は山族の人間だと言われていること。そして幼い頃から山族の雄介のことを見張るよう言われてきたこと。しかし、そんな伝説は実在せず、海山伝説にしがみついていることは無駄であると言った。

そんな智也に対し、雄介は逆上し、智也に掴みかかった。それにより、智也はドアノブに頭を強打し、植物状態となってしまったのだった。

植物状態となり、長期にわたり入院することになった智也だったが、実際には、聴覚や意識はしばらくすると戻っていた。しかし、感覚が戻らず、聴覚や意識が戻っていることを伝えられずにいた。そんな中、雄介は智也のことを毎日のように見舞いに来ていた。しかし、智也のことを思いやっているようで、智也との思い出の曲と言って流していた曲はデタラメだったりと、実は智也を思いやっているのではないことが智也には分かっていた。生きがいを奪われた雄介は、次の生きがいに友人を失いながらも希望を捨てずに看病し続ける自分を選んだのだった。

まとめ・感想

海山伝説という実在しない伝説をもとに描かれた作品でありながら、自分を確立することが出来ず、生きがいを探し続ける雄介の姿に、現在の若者像を見たような気がしました。このことは、『何者』でも表現されているように感じ、朝井リョウさんのなかでの1つのテーマなのではないかと感じました。「生きがい」を見つけることで、自分を持った気持ちになり、自分を表現しやすくなるというのは、私自身感じることで、それをこじらせてしまったのが雄介なのだと思いました。

この作品は、朝井リョウさんの作品に多い、学園ものではありませんが、若い2人の心情が緻密に表されており、登場人物の感情が伝わってくるようでした。雄介のことを情熱にあふれた青年だと思っていた筆者は、最後の展開に驚かされましたが、読み終えるととても考えさせられる内容でした。

他の朝井リョウさんの作品と比べ、この作品はページ数も多く、内容もしっかりと考えさせられるものとなっているので、ゆっくりと時間をとって読書を楽しみたいという方におすすめです。

お付き合いありがとうございました。