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『お家賃ですけど』のあらすじと感想|ネタバレあり

『お家賃ですけど』の作品情報

題名『お家賃ですけど』
著者能町みね子
発行所東京書籍株式会社
発行日2015年3月31日
ページ数195頁

能町みね子・作者情報

『自称漫画家』という肩書を使用している。実際には、エッセイスト、ライター、イラストレーター等もこなしている。性同一性障害を公表しており、2007年に、「男性」から「女性」への性転換手術を受け、現在は女性として生活している。

『オカマだけどOLやってます。』や『くすぶれ!モテない系』等の作品を手がける。また、ラジオやTVにも出演し、以前には、『久保みねヒャダこじらせナイト』等の番組も、もっていた。

あらすじ(ネタバレなし)

性別を変え、女性として生活する作者の、1つのアパートを中心に生まれる物語です。

東京で生活することになったものの、家賃が高いところには住めないと、作者は牛込にある築40年のアパートに住むことにします。一見、古くて小さなアパートでしたが、作者はアパートのことも、アパートの大家さんのことも大好きで、友達に、アパートのことを話しているときは、「のろけているみたいだ」と言われるほどでした。

書き出し紹介

牛込の加寿子荘を加寿子荘と呼んでいるのは私だけで、それもこっそり呼んでいるだけのこと、加寿子荘には本名がない。不動産屋で紹介を受けたときには、「坂井荘」と聞いていた。でも、実際に来てみると建物のどこにも「坂井荘」とは書いていない。

ストーリー(ネタバレあり)

この先、ネタバレがあります。ご注意ください。

平成14年春

筆者は、牛込にある築40年のアパートに住んでいた。そのアパートは古く、風呂なしの小さな部屋だった。アパートの大家さんは、80歳くらいのおばあちゃんで、いつもアパートを綺麗にしてくれていた。

古くて、多少の問題はある部屋だったが、筆者はこの部屋を気に入っていた。しかし、そんなお気に入りのアパートを筆者は1年あまりで出て行ってしまうのだ。

その理由は、筆者が性転換手術をし、女になることにあった。風呂なしのアパートでは、銭湯に行く必要があるが、男湯に入り続ける訳にはいかなかったのだ。

平成16年冬

部屋を出てから1年と9ヶ月。女になった筆者があのアパートに帰ってきます。今度の部屋は、以前住んでいた部屋の隣で、アパート唯一の風呂付きの部屋です。

ここならお風呂の心配もありません。エアコンも設置し、ベッドも買って、前回以上に快適な生活が始まりました。

平成17年春から平成18年冬

女になった筆者はオーエルとして働き始めた。化粧をして、オフィスカジュアルの服を着て、筆者はオーエルらしく生活していた。周囲に仲の良い人もでき、女としての生活は順調だった。

たまに環境の変化もあったけれど、大好きなアパートでの暮らしは、穏やかでとても気に入っていた。友達に、アパートの話をするときはのろけているみたい。と言われるほどだった。

平成19年春

本格的に女になる手術を海外に受けに行くことにした。海外での手術は無事成功し、日本に帰国したが、その直後、体調を崩し、入院することになった。今回の手術と直接の関係はなく、以前から抱えていた循環器系の問題が原因とのことだった。結局、循環器系の手術をすることになった。

入院生活は、大変なことも多く、老人ばかりだったが、それはそれで有意義な時間だった。しっかり回復し、やっとアパートに戻ることができたのは、3ヶ月後だった。

久しぶりに見たアパートは門がなくなり、少し変わっていたけれど、大家さんは元気で、大好きなアパートのままだった。高齢の大家さんの年齢から考えて、あと何年このアパートで暮らせるのだろうかとふと考えるとこみ上げるものがある。永遠にこのアパートと大家さんを見ていたいものです。

まとめ・感想

牛込のアパートを起点に、穏やかに進む毎日を覗くことのできる作品でした。

大家さんや周りの人の温かさに心がほっこりします。

段々と失われていく古い町並みや習慣を大切にしていきたいと感じる1冊です。

お付き合いありがとうございました。