『しろいろの街のその骨の体温の』や『地球星人』等の作品を手がける村田紗耶香(むらたさやか)さんの作品です。
2016年に、第155回芥川賞を受賞した話題の作品です。
不思議なタイトルから、想像力をかきたてられます。
では、早速読み進めていきましょう。
『コンビニ人間』の作品情報
題名 | 『コンビニ人間』 |
---|---|
著者 | 村田紗耶香 |
発行所 | 株式会社 文藝春秋 |
発行日 | 2018年9月4日 |
ページ数 | 168頁 |
村田紗耶香・作者情報
小説家。エッセイスト。『しろいろの街のその骨の体温の』や『地球星人』等の作品を手がける。著作『コンビニ人間』が、2016年に芥川賞を受賞し、注目された。
あらすじ(ネタバレなし)
主人公の恵子は、幼い頃から変な子だった。一般的に常識とされることが分からず、学校で問題を起こしたことも多々あった。そんな恵子は、18歳の時にコンビニ店員のアルバイトを始めてから、世界が変わった。コンビニの中に、『店員』としての自らの居場所を見つけたのだった。
それ以来、恵子は18年間コンビニのバイトを続けていた。独身で、就職経験も恋愛経験もない恵子だったが、コンビニにいると違和感を感じずに済むのだった。
そんな変わり者の恵子を描いた物語です。
登場人物紹介
- 古倉恵子(ふるくらけいこ):36歳独身。就職経験、恋愛経験なし。18年間コンビニのアルバイトを続けている。
- 白羽さん(しらはさん):恵子の勤めるコンビニに、新しくバイトとして入ってきた新人。
書き出し紹介
コンビニエンスストアは、音で満ちている。客が入ってくるチャイムの音に、店内を流れる有線放送で新商品を宣伝するアイドルの声。店員の掛け声に、バーコードをスキャンする音。かごに物を入れる音、パンの袋が握られる音に、店内を歩き回るヒールの音。全てが混ざり合い、「コンビニの音」になって、私の鼓膜にずっと触れている。
ストーリー(ネタバレあり)
この先、ネタバレがあります。ご注意ください。
幼少期
幼い頃から、恵子は変わり者だった。公園で小鳥が死んでいるのを見て、周りが泣いているとき、恵子は「焼き鳥にして食べよう」と嬉しそうに言うような子だった。小学校では、ケンカをしている男子を止めなければと思い、スコップで頭を殴ってケガをさせたこともあった。周りとは少し違う感覚を持つ子供だったのだ。
家族は、そんな恵子を愛し、大切にしてくれた。
しかし変わっている恵子に、周囲は常に「治す」ことを期待してきた。いつしか恵子自身の中にも、「治らなくては」という気持ちが芽生えるようになっていった。
コンビニ
大学に入ると、恵子はコンビニのアルバイトを始めた。お金に困っていたわけではなかったが、アルバイトは楽しく、恵子は初めて世界の正常な部品になれたと感じた。大学を卒業しても、恵子はコンビニのバイトを続けた。いつしかコンビニで働きだしてから18年が経過していた。
恵子は、就職活動をしても上手くいかなかった。コンビニの「店員」になることはできても、そのマニュアル外でどうしたら「普通の人」になることができるのかわからなかったのだ。コンビニの他の店員を見習って、恵子はなんとか「普通」を装っていた。
白羽さん
ある日、コンビニに新しいバイトが入った。その人の名前は白羽さんと言い、背が高く針金みたいに細い男性だった。白羽さんはバイトのやる気がなく、ふてぶてしい態度をとり続けた。そんな白羽さんに周りの目は厳しく、段々と陰口をたたかれるようになった。
サボり癖もあり、問題ばかり起こす白羽さんは、ついにコンビニのアルバイトをクビになってしまった。
利害関係
恵子には、少ないながらも友達がいた。しかし、最近になると、結婚や出産の話題が主で、恋愛経験がなく、結婚や妊娠の予兆さえない恵子に話が振られることも多くなっていた。また、両親や妹も、36歳になり、恋愛経験のない恵子のことを心配しているようだった。
そんなある日、恵子は偶然白羽さんと再会した。コンビニをクビになった白羽さんは、お金もなく困窮していた。家賃も滞納し、帰る家をなくした白羽さんと、ファミリーレストランで話をしていると、恵子はふと、いい案を思いついた。白羽さんを自らの家でかくまうことで、周りからの結婚等への期待をかわそうと考えたのだ。
利害関係の一致した2人は、共同生活を始めることになった。そのことを家族や友人に報告すると、周囲は恋人ができたと考え、恵子は祝福された。お互いが自らの快適な居場所を見つけ、共同生活は上手くいっていた。
崩壊
お金のない白羽さんを養うため、ついに恵子は長年続けたコンビニのアルバイトを辞め、就職活動を始めることにした。36歳就職経験なしという経歴のため、就職活動は難航したが、ついに面接に進める企業が見つかった。これには、白羽さんも大喜びだった。
その面接に向かう途中、コンビニに立ち寄ると、恵子はコンビニで働いていた記憶が蘇るのを感じた。そして、いつのまにか店員として、コンビニに貢献したいと考えるようになっていた。その思いに気づいた恵子は、白羽さんとの関係を解消し、コンビニ店員として、今後も生きる決心をした。
やはり、コンビニが自分の居場所だったのだった。
まとめ・感想
『コンビニ人間』というタイトルで、内容を想像してから、読み始めましたが、想像もしていなかった展開に驚かされました。
恵子の独特な考え方や生き方に、驚くとともに、納得させられる部分もあり、常識とされていることを考え直すきっかけになりました。
ページ数も少なく、とても読みやすいため、持ち歩きにもぴったりです。
お付き合いありがとうございました。