明智光秀による本能寺の変の後、実際に行われた清須会議を舞台とする時代小説です。
脚本家や俳優等多様に活動されている、三谷幸喜(みたにこうき)さんの作品です。
清須会議にまつわる人々の心情を、「現代語訳」で描いた、笑い必至の物語です。
小説『清須会議』の作品情報
題名 | 清須会議 |
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著者 | 三谷幸喜 |
発行所 | 幻冬舎 |
発行日 | 2013年7月31日 |
ページ数 | 300頁 |
三谷幸喜・作者情報
劇作家、脚本家、演出家、俳優、映画監督、コメディアン、小説家。多様な仕事をこなし、マルチに活躍している。『ステキな金縛り』や『THE有頂天ホテル』等の有名作を手がける。
人気連続ドラマ『真田丸』も手がけ、話題を呼んだ。
あらすじ(ネタバレなし)
本能寺の変によって、織田信長が亡くなった。織田信長亡き後、織田家の跡継ぎをめぐって、清州城で会議が行われることとなった。表面的には、皆が織田家のためを思って行動しているが、その下には領土や身分など、自らの行く末がかかっているのだった。
その清須会議に関わる人々の心情を描いた、ユーモラスな作品です。
登場人物紹介
- 柴田勝家(しばたかついえ):織田信長の筆頭家臣。髭をたくわえ、身体が大きい。お市の方に惚れている。
- 羽柴秀吉(はしばひでよし):信長の家臣。百姓から、城持ちの大名にまで出世した。
- 丹羽長秀(にわながひで):信長の家臣。柴田勝家と古くからの友達。冷静沈着で、慎重派。
- 明智光秀(あけちみつひで):信長の家臣。本能寺の変にて、謀反を起こしたが、秀吉の軍勢に敗退した。
- 池田恒興(いけだつねおき):信長の家臣。損得勘定で動く。あまり人望がない。
- 黒田官兵衛(くろだかんべえ):秀吉の参謀。頭が切れ、大変秀吉に重宝されている。
- お市の方(おいちのかた):信長の妹。とても美人で、織田家の象徴のような存在。秀吉を嫌っている。
書き出し紹介
熱いな。だいぶ熱くなってきた。それにしても、まさかこんな形で死を迎えるとは。だって昨日の夜まではごく普通の一日だったんだ。
本能寺の変に際し、織田信長が自らの人生を振り返る場面から、物語は始まります。
ストーリー(ネタバレあり)
この先、ネタバレがあります。ご注意ください。
一日目
織田信長亡き後、織田家の後継者を決める清須会議が開催される。今日から、会議に参加する諸大名たちが到着した。会議を主に進めるのは、信長の家臣の中心であった柴田勝家、羽柴秀吉、丹羽長秀、滝川一益らである。織田家に忠誠を誓っている彼らだったが、今回の会議には、それぞれが異なる思惑を抱えて参加していた。
織田家の今後に関する案は、大きく分けて2つあった。1つ目は、信長の三男で聡明な信孝を後継者にするというもの。2つ目は、信長の次男で、愚鈍な信雄を後継者にし、主たる家臣たちが合議制をしき、支えていくというものだった。1つ目の案を支持しているのが、柴田勝家、丹羽長秀、滝川一益、お市らだった。そして、2つ目の案を支持するのが、羽柴秀吉だった。信雄が後継者の器でないことは、誰の目にも明らかだったが、母親の身分の違い等から、簡単に2つ目の案を退けることが出来ないのだった。
秀吉が信雄を後継者に推したのには、深いわけがあった。信長亡き今、秀吉は家臣として織田家に付き従うのではなく、織田家を乗っ取り、自らが天下統一をはかることを望んでいたのだった。そのためには、愚鈍な信雄を後継者にした方が、都合がよいと考えたのだ。
二日目
この日は、本会議が予定されていたが、家臣団の1人である滝川一益の清洲城への到着が遅れ、後日に延期された。
噂で、柴田勝家らに、織田家の象徴ともいえるお市の方が味方したと聞き、悔しがる秀吉に、参謀の黒田官兵衛は、信長の弟である信包を味方につけることを提案する。信包は茶の湯を好んでいたため、高級茶の湯セットを手土産に渡し、味方に付いてほしいとのお願いをした。
本会議は延期されたが、本会議を円滑に進めるためとの名目で、プレ会議を行うことが提案された。これは柴田勝家らが、本会議を優位に進めるための先手であった。
プレ会議では、本会議の出席者について話し合われた。会議を優位に進めるため、五宿老での話し合いを提案する勝家らに、秀吉は、明智で空いた宿老の座を補充してから、会議を行うべきであると提案する。これには、反論することもできず、損得勘定で有名な池田恒興が宿老に就任し、会議に参加することが決まった。また、到着の遅れている勝家派の滝川を待ちたいと主張する勝家らに対し、一刻も早く後継者を決めることが務めであるとし、秀吉は滝川を待たず本会議を進めることを提案した。
これには、強く反論した勝家らだったが、そこを通りがかった信包が、「後継者を早く決めるように」と告げたことをもって、あと1日だけ待って、間に合わなかった場合は、明後日本会議を行うことが決まった。話をつけに行った際は、煮え切らない態度であった信包だったが、秀吉の味方に付いたことが明らかになった瞬間だった。
会議に向けて盛り上がる中、秀吉を恨むお市は、自らに好意を寄せる勝家を利用し、秀吉を失脚させようと試みる。しかし、お市に結婚を申し込まれた勝家は有頂天になり、会議そっちのけで、恋愛にうつつを抜かし始めてしまう。
三日目
滝川を待つ間、信雄と信孝の力を見せ合うため、イノシシ狩りを行うことになった。諸大名らが、信雄と信孝派に分かれ、イノシシ狩りに参戦した。この企画は、信雄によって提案されたものだったが、実際にイノシシを見ると震えあがり、全く手の出せない信雄に誰もが呆れてしまった。
これにより、事態は大きく信孝派に傾き始めた。信雄を推していた秀吉さえも、さすがに信雄に呆れてしまった。しかし、ここで信孝を推してしまっては、秀吉は勝家らに従わなければならなくなってしまう。
そこで、官兵衛と考えた第3の案が、本能寺の変で亡くなった嫡男信忠の息子三法師を後継者にするというものだった。しかし、三法師はまだ3歳であったため、後見人を設け、政治を行うというのであった。この案を、言葉巧みに勝家はの丹羽長秀に話すと、もっともな案に、長秀も納得させられてしまう。
秀吉派が増え、勝家派が危機を迎えていたが、当の勝家は、お市にうつつを抜かし、秀吉の台頭には全く気付いていなかった。
四日目
滝川は結局間に合わず、ついに本会議が開催された。本会議には、柴田勝家、丹羽長秀、羽柴秀吉、池田恒興が参加した。秀吉の台頭に気づかず、勝家は勝家派が勝つものだと高を括っていた勝家は、堂々と信孝を後継者にする案を提案した。それに対し、秀吉は三法師を後継者とすることの正当性をしっかりと語った。秀吉の提案に納得させられた池田は、早々に秀吉派を表明し、勝家との友情の狭間で迷っていた丹羽長秀もが、最終的には秀吉派を表明した。そして、多数決により、秀吉の三法師案が採用された。
これにより勢いをつけた秀吉は、次の領地に関する議題においても、希望の山城国(現在の京都府)を手に入れた。それ以来、秀吉派更には力をつけ、天下統一を目指して進んでいくこととなる。
まとめ・感想
各登場人物の性格や考え方が強く伝わってきて、まるでその場にいるかのような気持ちになりました。
解説では伝えきれなかった独特の言葉遣いや、ユーモラスな一面に、笑いが止まらなくなってしまうこと間違いなしの作品です。
歴史を知らなくても楽しく読むことが出来るので、歴史に興味がないという方にもおすすめです。
お付き合いありがとうございました。