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『桐島部活やめるってよ』のあらすじと感想|ネタバレあり

朝井リョウさんのデビュー作であり、代表作です。朝井リョウさんらしい学園モノの作品となっています。物語中では、直接描かれない「桐島」という人物が部活をやめたことによって動き出した、とある学校の生徒たちの様子が描かれています。

本作は、作者の朝井リョウさんが大学在学中に執筆した作品となっており、学生ならではの視点から描かれています。

『桐島部活やめるってよ』の作品情報

題名『桐島部活やめるってよ』
著者朝井リョウ
発行所株式会社集英社
発行日2012年4月25日
ページ数245頁
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朝井リョウ・作者情報

1989(平成元)年、岐阜県生れ。早稲田大学文化構想学部卒業。2009年『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。2011年『チア男子!!』で高校生が選ぶ天竜文学賞、2013年『何者』で直木賞、 2014年『世界地図の下書き』で坪田譲治文学賞を受賞。ほかの著書に『もういちど生まれる』『スペードの3』『武道館』『世にも奇妙な君物語』『死にがいを求めて生きているの』などがある。
https://www.shinchosha.co.jp/writer/4436/

あらすじ(ネタバレなし)

ある高校のバレー部キャプテンだった桐島が突然部活をやめたらしい。この話は噂となって学校中に知れ渡った。それをきっかけに、身近なバレー部員から、桐島とは一見関係のなかった生徒にまで、段々と波紋が広がっていく。そんな脆い高校生の姿を描く青春ストーリー。

登場人物紹介

    桐島:バレー部の元キャプテン。ある日突然部活をやめた。
    小泉風助(こいずみふうすけ):バレー部のリベロ。桐島が部活を辞めたことにより、試合に出るようになった。
    沢島亜矢(さわじまあや):吹奏楽部の部長。校内でも目立つ男の子に片思いをしている。
    前田涼也(まえだりょうや):映画部の部員。地味でおとなしいタイプであるため、一部の生徒からは見下されている。
    宮部美果(みやべみか):ソフトボール部の部員。クラスでも目立つタイプで、彼氏もいる。
    東原かすみ(ひがしはらかすみ):バドミントン部の部員。幼い頃からバドミントンを続けており、映画も好き。

書き出し紹介

「え、ガチで?」おー、とダルそうに答えながら、竜汰は俺のチャリの荷台にまたがった。夕日の熱が自転車のサドルを赤く染めている。

ストーリー(ネタバレあり)

この先、ネタバレがあります。ご注意ください。ネタバレ部分は赤字で表記します。

小泉風助

バレー部で同じリベロを務めていた桐島が突然部活を辞めた。顧問からその報告を受けた時、風助は嬉しい気持ちを必死で隠していた。風助は桐島と同じリベロのポジションを務めていて、風助より上手で、キャプテンの桐島がいるといつも試合に出してもらえなかったのだった。

桐島が部活を辞めた理由ははっきりとは分からなかったが、桐島は部活で浮いてしまっていた。キャプテンだった桐島は少し口調がきつかった。それでいつのまにか周りと距離が生まれでしまっていた。それでも、風助は桐島が好きだった。桐島も風助には距離を置いていなかった

風助がレギュラーメンバーになって初めての公式戦を迎えた。いつも公式戦では桐島の動きに自分の動きを重ねてシュミレーションしていた。頭の中では桐島以上の動きができていた風助だったが、実際に試合に出ると、体が硬くなってミスが目立った。そんな時ベンチにいる部員からアドバイスが送られた。そこでふと自分のプレーを取り戻した風助は今まで自分が桐島に果たしていた役割を理解したのだった。

沢島亜矢

吹奏楽部のコンクールが近づく中、亜矢は練習に集中しきれずにいた。その理由は亜矢の好きな人にあった。亜矢が好きな竜汰はクラスの中でも目立つタイプで、くしゃくしゃのパーマをかけ茶色の髪の毛をしていた。そんな竜汰は、毎日校庭でバスケをしていた。竜汰に片思いしながらも話しかけることもできない亜矢は、校庭でバスケをしている竜汰を眺めるために校庭を向いて練習をしていたのだった。

竜汰と話せなくても、少しでも可愛く見られたいと努力する亜矢に、竜汰には彼女がいるらしいという悲報が流れてきた。その場は平然を装い、聞き流した亜矢だったが、吹奏楽部の練習場所に行き、いつもの場所に座ると、頭の中に竜汰の姿が浮かんできた。泣きそうになる気持ちを抑え、亜矢は校庭に背を向けた。

前田涼也

映画が大好きな涼也は、高校では映画部に所属している。その映画部で撮った作品がコンクールで賞をとった。そのおかげで全校生徒の前で表彰されることになったが、華やかなスポーツ系の学生達に囲まれ、地味で目立たない涼也達映画部の学生は肩身の狭い思いをした。

学校には、自然と生徒のランク付けがある。映画部に入っている涼也やその友達らは、確実にランクの下位に位置している。そして、上位に位置している目立つ学生達は下位の学生を見下しているのだ。

しかし、そんな映画が大好きな涼也を見下すことのない女の子が1人いた。その子はかすみといい、中学生の頃に自分から涼也に話しかけてきたのだった。2人は映画の話で盛り上がり、すぐに距離を縮めた。しかし、クラス替え等を経て、2人は段々と話さなくなり、同じ高校に進学したことさえも知らなかった。高校に入ってからは一言も話していなかったが、涼也は未だにかすみに特別な思いを抱いていた。

映画部が表彰されてしばらく経った頃、涼也達映画部は、新たな映画を撮ることを決めた。その撮影で、学生の様子を撮影するために、部活をしているバトミントン部の様子を撮影することになった。そのバトミントン部にはかすみがおり、凛とした姿で練習をしていた。その姿を見た涼也は、勇気付けられ、その新作映画が出来上がったらかすみに話しかけようと決めた。

宮部美果

ソフトボール部で活躍する美果は、彼氏もいて、顔も可愛く、クラスでも目立つグループに属している。学校生活も充実していて悩みなどなさそうに見える美果だったが、実は家族に大きな問題を抱えていた。

美果の母は、美果を生んですぐに亡くなっており、美果は父に育てられた。美果が9歳になった時、父は再婚し、美果には新しい母ができた。新しいお母さんには美果より2つ年上の子どもがいて、美果はお母さんと同時に姉もできたのだった。姉はカオリといい、勉強も運動もできる完璧な女の子だった。お母さんは優しく、美果のことも大切にしてくれていたが、うっすらとカオリとの差を感じることがあった。

ある日、カオリはセンター試験を受験するために、お父さんの運転する車に乗って出かけて行った。それがお父さんとカオリを見た最後になった。お父さんたちの車は、飲酒運転の車に突っ込まれ、2人とも即死だった。その日からお母さんはおかしくなった。美果のことを見ても「カオリ」と呼ぶようになったのだ。カオリに置き換えられた私だったが、お母さんは大切なただ一人の家族であり、お母さんを悲しませないように美果は「カオリ」として生きることを決めた。

カオリとして生きることを決めた美果だったが、自分を押し殺し、カオリとして生きることは思っていたより辛く苦しいことだった。美果であることを分かって、自分を認めてほしかった。ある日、色々なことが頭に浮かび部活を早退してしまった帰り道、今日が母の誕生日であることを知る。優しいカオリを演じ、花を買って帰った美果は、母との話の中で、母が美果のことを覚えており、突然いなくなってしまったことをずっと心配していることを知った。お母さんの話を聞く中で美果は、自分がお母さんから愛されていたことが分かり、カオリとしてお母さんをこれからも支えていくことを心に誓ったのだった。

まとめ・感想

ある学校のバレー部員桐島が突然部活を辞めてから、桐島とは直接関係のない人にまで波紋が広がり始めます。物語のキーパーソンとなる桐島本人に関しては、物語中では描かれず、『桐島部活やめるってよ』という人づてに聞いたというニュアンスのタイトルにぴったりだと思いました。

学園ものを多く手掛ける朝井リョウさんらしい、学生の心情や不安がリアルに描かれています。それぞれの登場人物の口調や砕けた言葉等も高校生らしさを表しており、注目のポイントです。

各話ごとに主人公が異なり、基本的には話も1話完結ですが、それぞれの主人公が別の話にも登場したりと、物語同士のつながりがあるのが特徴です。この作品は、朝井リョウさんのデビュー作であり、代表作のため、朝井リョウさんの作品を初めて読む方にもおすすめです。

お付き合いありがとうございました。

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