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『自閉症の僕が跳びはねる理由』のあらすじと感想|ネタバレあり

なかなか理解されがたい自閉症を有する人の気持ちが描かれたエッセイです。

『あるがままに自閉症です』や『跳びはねる思考』等の作品を手がける、東田直樹(ひがしだなおき)さんの作品です。

1話ごとがとても短いため、移動時間等の読書にもおすすめです。

では、読み進めていきましょう。

『自閉症の僕が跳びはねる理由』の作品情報

題名『自閉症の僕が跳びはねる理由』
著者東田直樹
発行所ランダムハウス
発行日2007年2月28日
ページ数135頁

東田直樹・作者情報

小説家・詩人・絵本作家。重度の自閉症を有する。発話が困難であるため、筆談によって、コミュニケーションをはかっている。

本作の他にも、『あるがままに自閉症です』や『跳びはねる思考』等の作品を手がけ、なかなか理解されがたい自閉症を有する人の行動を解説している。また、絵本や詩集も執筆しており、絵本『きかんしゃ カンスケ』や詩集『みんなの知らない海の音』等の作品がある。

あらすじ(ネタバレなし)

筆者は、自閉症を有しており、人に会話で自分の気持ちを伝えるのが困難です。そんな自分が悲しく、筆者は苦しんでいました。筆者は訓練し、会話の代わりに、筆談で自分の気持ちを伝えることが出来るようになりました。

その筆談を用い、筆者が中学生のころに、自らの気持ちや障害について語ったエッセイです。「なぜ会話することが出来ないのか」や「なぜ落ち着きがないのか」等、よく疑問に思われる自閉症者の行動を、筆者の視点から解説されています。

自閉症を有する人を、身近に感じられる作品です。

書き出し紹介

自分が障害を持っていることを、僕は小さい頃は分かりませんでした。どうして、自分が障害者だと気づいたのでしょう。それは、僕たちは普通と違うところがあってそれが困る、とみんなが言ったからです。

ストーリー(ネタバレあり)

この先、ネタバレがあります。ご注意ください。

言葉について

筆者は、会話をすることが出来ません。しかし、それは声を出せないからではありません。大きな声を出すこともありますが、それは声を発したくて発しているのではなく、見たものや聞いたこと、考えたことに対する反射で声が出てしまうのです。

自閉症で会話ができないと、よく赤ちゃん扱いされることもあります。しかし、それに対し、筆者らは惨めな気持ちになり、年齢相応の態度で接してほしいと思っています。本当の優しさとは、相手の自尊心を傷つけないことなのです。

筆者らは、思った通りに言葉を発することができません。しかし、基本的にはみんなと同じような気持ちを持っています。発する言葉を信じすぎず、心の内を分かってもらえたらうれしいです。

対人関係について

一人で過ごしていると、一人が好きなのだと思われます。しかし、本当は、みんなと一緒に過ごしたいのです。周りに迷惑をかけていないか、嫌な気持ちにさせていないかと考えて、一人になろうとしているのです。

表情が乏しいとよく思われますが、それは、みんなが筆者らと同じような考え方ではないからです。みんなが笑っているとき筆者らは笑えないのです。人の批判をしたり、人を馬鹿にしたりすることでは、筆者らは笑えないのです。美しいものを見たり、楽しかったことを思い出したときに、心からの笑顔が出るのです。

筆者らの面倒をみるのは大変だというかもしれません。しかし、筆者らも、人に迷惑をかけてしまい、自分が何もできないことがとても辛いのです。自分が辛いのは我慢できますが、自分のせいで、人を不幸にしてしまうことには、耐えられないのです。

感覚の違いについて

筆者らがピョンピョンとよく跳びはねるのは、興奮しているからではないのです。自分や他人に縛られ、動けなくなってしまわないように、跳んでいるのです。

みんながしないことをするのはなぜでしょうか。感覚が違うのでしょうか。そうするのが好きなのでしょうか。どちらも違うと筆者は考えています。そうしなければいけないくらい、筆者らは苦しいのです。みんなと同じように、苦しさを分かってもらえないのが辛いのです。

興味・関心について

長い文章を読むことは、嫌いではありません。でも、読むだけの根気がなく、すぐに疲れてしまうのです。でも、本当は色々なことを学んで成長したいのです。勉強を教えてくれる人は、本当の気持ちを理解してくれると嬉しいです。

筆者らは緑が好きです。筆者らにとって、緑は命の色です。緑を見ると、障害をもつ自分も、この地球に生きていて良いのだと感じさせてくれるのです。自然と遊ぶことは、筆者らの楽しみなのです。

活動について

筆者らの心は、いつも揺れ動いています。目についた場所に飛んでいきたくなる気持ちを抑えることが出来ません。行きたくて動いているわけではないのに、自分でもやめられないのです。

筆者らは、好きでこだわりを持っているわけではありません。でも、こだわっていることをやると少しだけ落ち着くのです。こだわりを注意されたり、辞めさせられたりすると、とても情けなくなります。自分でも、やりたくないのにやってしまう自分が嫌なのです。

自閉症とは、文明の支配を受けずに、自然のまま生まれてきた人達なのだと思います。見た目はみんなと変わらないのに、みんなとは何もかも違うのです。筆者らの存在で、この地球にとっての何か大切なものを思い出してくれたら、うれしいです。

短編小説 側にいるから

ある日、駿は周りが自分を見る視線に違和感を感じた。駿の母までが、駿の心を凍らせるような目をしているのだ。耐えきれず、駿は家を飛び出し、ずっと歩き続けた。

しかし、両親さえも駿を迎えに来ない。さまよい続けていると、一人のおじさんが駿に話しかけてきた。そのおじさんに、駿は車にはねられて自分が死んでいることを告げられる。そして、おじさんは天使で、僕を天国へ連れて行ってくれると言われた。

おじさんについて、天国に行くと、僕の体はなくなっていた。途方に暮れて、家に帰してほしいと願うと、駿の魂は自分の家に戻った。そこでは、両親が駿を失った悲しみに暮れていたのだった。

天国に戻ると、駿はなんとかして両親を助けてあげたいと、神様にお願いをする。神様はそんな駿に対し、一つだけ解決策があるという。その内容とは、両親のもとに新しい子供として生まれ変わることだった。しかし、そのためには、駿は駿であった記憶をすべて消さねばならないとのことだった。

辛い条件に悩む駿だったが、両親の様子をうかがうと、母が悲しみから体調を崩し、入院していることを知った。それを見て、駿は、両親のもとに新しい子供として生まれ変わることを決意した。

それから5年が過ぎた。駿は、のぞみという名の女の子として生まれ変わり、両親とともに幸せに暮らしていた。

まとめ・感想

行動を見たり、声を聴くだけではわからない、自閉症を持つ人の気持ちを知ることができ、自閉症を有する人を、身近に感じることが出来ました。

今まで、自閉症を持つ人に対し、「怖い」や「分からない」と感じていた方も、この作品を読むことで、考え方の変わる1冊だと思います。

語り口調でつづられており、とても読みやすいため、ちょっとした息抜きにもおすすめです。

お付き合いありがとうございました。