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『武道館』のあらすじと感想|ネタバレあり

近年、注目を浴びているアイドルに関する物語です。アイドル特有の悩みや苦しみが、朝井リョウさんらしい心情表現で、リアルに描かれています。

アイドルであれば当然とされていることに疑問を呈す作品で、とても考えさせられました。

『武道館』の作品情報

題名『武道館』
著者朝井リョウ
発行所株式会社文藝春秋
発行日2018年3月20日
ページ数368頁
¥737
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朝井リョウ・作者情報

1989(平成元)年、岐阜県生れ。早稲田大学文化構想学部卒業。2009年『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。2011年『チア男子!!』で高校生が選ぶ天竜文学賞、2013年『何者』で直木賞、 2014年『世界地図の下書き』で坪田譲治文学賞を受賞。ほかの著書に『もういちど生まれる』『スペードの3』『武道館』『世にも奇妙な君物語』『死にがいを求めて生きているの』などがある。
https://www.shinchosha.co.jp/writer/4436/

あらすじ(ネタバレなし)

幼い頃から歌って踊ることが大好きだった愛子は、ついに夢を叶え、アイドルとしてデビューした。もともとアイドルに憧れていた愛子にとって、アイドルとしての活動は楽しく、やりがいもあった。アイドルの仲間にも恵まれ、愛子は楽しい毎日を送っていた。

そんな頃、世間ではアイドルとしての理想像を追い求める動きが強く、アイドルの熱愛等はタブーとされていた。愛子も自分には縁のない話だと思っていたが、段々と事態は動き始め、愛子のアイドル生活にも影響を与え始める。

登場人物紹介

  • 愛子(あいこ):物語の主人公。歌や踊りが大好きな高校生で、最近やっとアイドルとしてデビューした。
  • 大地(だいち):愛子の幼馴染。幼い頃から剣道を習っている。愛子とは家族ぐるみで仲が良く、同じマンションに住んでいる。
  • 碧(みどり):愛子と同じアイドルグループのメンバー。愛子から「本物のアイドル」といて憧れられている。

書き出し紹介

右手で母の手を、左手で父の手を握っていた。「こうでもしないと、愛子はすぐ踊ったりしちゃうから」

ストーリー(ネタバレあり)

この先、ネタバレがあります。ご注意ください。ネタバレ部分は赤字で表記します。

幼い頃から愛子は、歌って踊るのが大好きで、いつもみんなに歌や踊りを披露していた。そんな愛子には家族ぐるみで仲良くしている幼馴染みがいた。幼馴染みの名前は大地と言い、大の仲良しだった。大地とは同じマンションに住んでおり、いつも一緒に遊んでいた。

その関係は、中学・高校になっても変わらず、2人はずっと仲良しだった。そんな中、愛子は幼い頃からの夢だったアイドルになり、大地は小さい頃からずっと続けている剣道が忙しく、前のようには会えなくなっていった。

愛子の所属するアイドルグループは、5人組のアイドルグループで、年も近く、みんな仲良しだった。毎日のように練習に明け暮れ、5人で目指す先は武道館でのライブだった。ひたむきに努力する彼らの姿勢は評価され、段々と愛子たちのアイドルグループの知名度も上がってきた。

そんな頃、別の有名アイドルグループで熱愛スキャンダルが発覚した。そのアイドルは謝罪の意を込めて丸坊主にし、注目を浴びたのだった。愛子たちのグループももちろん恋愛は禁止で、学校等でも行動に気を付けるように強く言われていた。

誰もがスキャンダルなどとは無縁で、順調に活動を続ける中、愛子は、大地に対する気持ちの変化を感じていた。今まではただの幼馴染だった大地に別の感情が芽生えていると気づき始めたのだった。必死で感情に蓋をしようとする愛子だったが、そんな努力もむなしく、2人の会う頻度は段々と上がっていく。そして、日々の内容をメールで送り合うことを約束した。そして、愛子の誕生日、プレゼントを届けに来てくれた大地によって気持ちを伝えられ、2人は付き合うことになった。

しかし、事務所の言いつけを破り、恋愛を始めた愛子だったが、練習を怠ることはなく、大地とは同じマンションに住んでいたため、2人の関係が公になることはなかった。そんな頃、同じグループのメンバーである碧の様子がおかしくなった。いつも活動に真面目で、アイドル中のアイドルのようだった碧が、上の空であったり、練習を無断で休むことが出てきたのだった。その様子に気づいた愛子は、碧とよく話すようになった。そして、ある日碧と出かけた際に、好きな人がいると相談を持ち掛けられた。

それを聞いた愛子も、ついに大地との関係を碧に話し、2人の関係はさらに近づいて行った。お互い秘密を守り、アイドル活動には熱心に取り組む日々の中で、碧がまた練習を休み、その際に別の場所にいたことがバレてしまった。その日、好きな人と会う約束をしていたという碧の話を聞き、自らと重ね合わせ心を痛める愛子だったが、事務所や他のメンバーの目は厳しかった。

そんな時、ついに愛子たちのアイドルグループの武道館公演が決まった。長年の夢が叶い、沸き立つメンバーたちは、さらに練習に力を入れ、最高のライブにしようと誓った。

しかし、同じ頃、ついに愛子と大地の関係がスクープされた。情報を漏らしたのは、愛子と大地の中に嫉妬した、大地の所属する剣道部のメンバーだと発覚したが、世間の目は冷たかった。その直後、碧に関する内容もスクープされ、2人は、アイドルとして、窮地に立たされることになった。

事務所から、内容について話を聞かれ、厳しい現実を突きつけられる中、愛子は冷静だった。「愛子と大地が」という形ではなく、「女性アイドルが熱愛」という形で報道されること。アイドルであることとは何なのか。そう考えたとき、愛子は大地との関係を壊してまでアイドルを続けることが正しいことだとは思えなかった。そして、ついにアイドルを辞めることを決めた。それは碧も同じで、愛子と同じ決断を下した。

それから10年以上の時がたち、未だにアイドルは健在で、人気もあるが、アイドルは恋愛禁止という風潮はなくなり、むしろ恋愛をするくらい人間味のあるところが良いとされているそうだ。

まとめ・感想

近年のアイドル人気が高まる中、アイドルは人々の理想像のようになり、恋愛禁止等、人間味なく振舞うことを余儀なくされてきました。それがアイドルとして当たり前のようになる中で、恋愛禁止の規則を破ったメンバーが髪の毛を剃ったり、脱退したりと反省する様子も多くみられてきました。この作品は、そんな世の中の異常さに、作者が疑問を呈しているのではないかと思います。

普段は知ることのできないアイドルの本音や心情が、朝井リョウさん独特の心情表現で、リアルに描かれており、まるで実話のように感じられるほどでした。アイドルならではの苦悩や不安が感じられ、アイドル人気の高まる現代にぴったりの作品だと思いました。

アイドルに興味がある方よりも、あまりアイドルに興味がない、または興味が持てないという方にこそ一度読んでみてほしい作品です。

お付き合いありがとうございました。

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