文芸・現代

『ナベちゃんのヨメ』のあらすじと感想|ネタバレあり

『ナベちゃんのヨメ』の作品情報

題名ナベちゃんのヨメ
著者辻村深月(つじむらみづき)
発行所Amazon Publishing
発行日2017年7月14日

辻村深月・作者情報

小説家。『ツナグ』『鍵のない夢を見る』等の作品を執筆する。『ツナグ』は、映画化もされており、俳優の松坂桃李さん主演で、話題を呼んだ。

映画の脚本も手掛けており、映画『ドラえもん のび太の月面探査記』の脚本を担当している。

あらすじ(ネタバレなし)

コーラス部では珍しい男子部員のナベちゃんは、色白でいじられキャラの女の子みたいな少年だった。そんなナベちゃんが、ついに結婚するという。しかし、そのナベちゃんの嫁がどうやら「ヤバい」ようなのだ。ナベちゃんの嫁に振り回され、私たちはナベちゃんとの間に距離感を感じ始める。

複雑な人間の心理を描いた作品です。

登場人物紹介

  • ナベちゃん:元コーラス部の男子部員。色白でいじられキャラだった。
  • 私:元コーラス部員。ナベちゃんとは仲が良く、家で課題を手伝ってもらったこともあった。

書き出し紹介

ナベちゃんの嫁がヤバいらしいーという噂が立つ。正確には、まだ嫁じゃなくて、結婚することになった相手ー婚約者だ。

ストーリー(ネタバレあり)

この先、ネタバレがあります。ご注意ください。

コーラス部では珍しい男子部員だったナベちゃんから、元コーラス部の面々に結婚報告のメールが届いた。しかし、そのメールが届くと、たちまち「ナベちゃんの嫁はヤバイ」という噂が広まったのだった。その理由はすぐにわかった。結婚報告の文面の下に、「彼女が気にする人なので、直接自分には連絡せず、コーラス部の男子部員をどうして連絡してください」と書かれていたのだった。

これを読んだ元コーラス部の女子達の中で、ナベちゃんの嫁はヤバイと噂が広まり、ナベちゃんやナベちゃんの嫁へのイメージが変わり始めたのだった。同窓会で、結婚報告もかねて行うというナベちゃんとナベちゃんの嫁と会うと、その噂は的中していたことが明らかになった。ナベちゃんとナベちゃんの嫁は、食事中もずっと手をつないでいるのだった。さらには、コーラス経験のある私達に、結婚式で新婦側の友人として、コーラスを披露してほしいと言い出したのだった。

その場は断りきれず引き受けてしまった私達だったが、家に帰ったのち、私達友人のなかでは不満たらたらだった。引き受けた場合の練習コストや手間などを考え、結局私達はコーラスをキャンセルすることにした。

それをナベちゃんに連絡すると、なかなか返事は返ってこず、最終的に、「新郎が女性を結婚式に招待するのは非常識だった」と、結婚式の招待を取り消されてしまったのだった。

これら一連の流れに、女子の友人達では、不満の声が強く上がった。そして友人達で集まると、ナベちゃんの嫁に対しての悪口が溢れ出すのだった。そんななか、ナベちゃんの嫁に対する新たな噂が広まり始めた。なはナベちゃんの嫁は、大学を退学になっているというのだ。そして、その原因が教授を執拗にストーカーしたというものだった。これを聞いて、私達の悪口はさらに加速した。

そんな時、私はふと気づいた。学生時代から、女の子っぽいナベちゃんだったがナベちゃんは女の子が好きで、コーラス部の女の子達とも付き合いたいと思っていたこと。でも、友達としては大事にしても、誰もナベちゃんを自分の1番として大切にはしなかった。きっとナベちゃんは誰かの1番になりたかったんだ。そして、やっと1番になれる場所、1番にしてくれる場所を見つけたのだ。

まとめ・感想

読みながら私も、コーラス部の女友達と同じようにナベちゃんの嫁に不信感を抱き、腹を立てていましたが、主人公の気づきを読んで、ふと我に返ったような気持ちになりました。

それぞれの考え方があり、相手の考え方を受け入れ、尊重することが大切なのだと思いました。

短い小説ですが、とても考えさせられる1冊でした。

お付き合いありがとうございました。

ABOUT ME
いけだ
読書家。現役女子大生。物心ついた頃から、本を読んで育つ。 本の読みすぎから、小学生時点で漢字の読みだけは高校生レベルを誇った。 活字は基本的に何でも読むが、中でも小説に目がない。本選びは、タイトルと書き出しを見て、直感的に行う。 無計画に書店をうろつき、本を眺めるのが至福の時。最近、小説をまとめ買いできるようになって、大人を感じている。
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