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『世にも奇妙な君物語』のあらすじと感想|ネタバレあり

タイトルから気づいた方も多いかと思いますが、朝井リョウさんが大人気テレビドラマ『世にも奇妙な物語』に憧れ、映像化を夢見て執筆した作品です。

タイトルの通り、少し不気味で現実でも起こりそうな物語となっています。想像できない最後の展開を楽しんでみてください。

『世にも奇妙な君物語』の作品情報

題名『世にも奇妙な君物語』
著者朝井リョウ
発行所株式会社講談社
発行日2018年12月1日
ページ数258頁
講談社
¥412
(2019/11/23 03:09:25時点 Amazon調べ-詳細)

朝井リョウ・作者情報

1989(平成元)年、岐阜県生れ。早稲田大学文化構想学部卒業。2009年『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。2011年『チア男子!!』で高校生が選ぶ天竜文学賞、2013年『何者』で直木賞、 2014年『世界地図の下書き』で坪田譲治文学賞を受賞。ほかの著書に『もういちど生まれる』『スペードの3』『武道館』『世にも奇妙な君物語』『死にがいを求めて生きているの』などがある。
https://www.shinchosha.co.jp/writer/4436/

あらすじ(ネタバレなし)

テレビドラマ『世にも奇妙な物語』のファンである朝井リョウさんが、映像化を夢見て作った物語。実際にありそうでないような話を描く現代の風刺短編集。

書き出し紹介

ガン、とグラスの底が鳴る。カウンター越しにいる店員が、一瞬、眉をひそめる。

ストーリー(ネタバレあり)

この先、ネタバレがあります。ご注意ください。ネタバレ部分は赤字で表記します。

立て!金次郎

幼稚園で働く孝次郎は頭を抱えていた。学年主任の須永から、「クラスの子全員が年間で均等に目立つように」と言われている中で、クラスの中で目立つことを嫌う学人を文化祭で主役にすることが出来なかったのだ。「残る運動会で絶対に目立つ役割を与えるように」と言い残し去っていく須永を見ると、孝次郎の胃はぎりぎりと締め付けられる。こんな須永だが、なぜか子供たちの母親からの評判はいいから不思議だ。

近年、幼稚園の先生たちは、子どもたちの親からの評判を恐れて、幼稚園を運営している。というのも、子どもたちの母親に嫌われたら、全く立場がなくなってしまうのだ。須永のいう子供たちを均等に目立たせることも子供たちの親からクレームが出ないようにすることが目的だった。実際、母親たちからのクレームの威力は強く、幼稚園に置かれていた二宮金次郎像が「歩きながら本を読むなんて、子どもがまねしたら困る」という母親のクレームによって座りながら本を読む像に変えられたほどだった。

孝次郎は、幼稚園では珍しい若い男性ということもあり、母親たちから好かれている自信があった。しかし、2か月ほど前から、一部の母親が孝次郎に挨拶を返さなくなり、クレームが入ることも出てきていた。原因が分からず悩む孝次郎だったが、須永の言う通り、「人前に出たくない」という学人を無理やり運動会で前に出させることはできなかった。そんな孝次郎に、須永は1年間の行事と、行事で目立たせる子供をランダムに選び星印で示した表を渡してきた。それに対し、孝次郎は呆れかえり、自分のやり方で親たちと戦うことを決めた。

運動会当日、孝次郎は、学人を主役にすることはせずに、学人に放送を担当させることにした。人前に出ることなく、目立つことのできた学人は大喜びで、孝次郎と学人の絆は深まったようだった。その様子を見ていた母親たちも孝次郎を褒め、独断で行動した孝次郎を責める須永を批判した。これにより、孝次郎と須永の関係は逆転した。

そんな母親の手には1枚の表が握られていた。その表には、園の先生たちの名前と年間スケジュールが書かれ、それぞれの横に星印が書かれていた。母親たちもランダムで先生を選び、園の運営を怠けないよう、アメとムチで対応していたのだった。

13.5文字しか集中して読めな

香織は、ネットニュースの記事のライターを行っている。香織のサイトでは主に、有名人のゴシップ情報等を中心に扱い、13.5文字の見出しに、3行の要約文を経て、やっと本文にたどり着くという形式をとっている。この方法はマーケティング部の調査によるもので、アクセス数を最も集められる方法だという。実際この方法の記事はアクセス数が多く、手法をたたかれることもあったが、香織はアクセス数が伸びることがただ誇らしかった。

香織のサイトでは、真実をありのままに伝えるというより、視聴者の望む形に真実をゆがめて報道するものも多かった。しかし、香織はそれが「見たい、知りたいと思うことをできるだけ多くの人に届けることで、物事への注目度を高めること」につながると考えており、ためらいなく記事を手がけていった。そんな頃、夫の帰宅時間の遅さから、香織は夫の浮気を疑うようになった。そこで自らが手がけた記事の浮気調査法に基づいて、こっそり夫のレシートを漁っていると、甘いものが苦手なはずの夫の財布からスイーツのレシートがでてきたのだった。

夫の浮気を確信した香織に更なる追い打ちがかけられた。香織が尊敬し、自分を応援してくれていると思っていたネット記事部門の室長である板谷から「香織のような記事の書き方でアクセス数を稼ぐのはもうやめたい」と伝えられる。それを聞いた香織はショックを受け、ついに元カレであった社内の同僚岡田とご飯に行ってしまう。岡田との浮気を考えた香織だったが、夫や息子の直喜のことを考え、踏みとどまった。その夜、家に帰ると夫の会社の社内報が机に置かれており、夫が社内報の特集でスイーツを買っていたことが判明した。

直喜からどうしても来てほしいと頼まれ、午後休を取って直喜の授業参観に駆け付けると、直喜が将来の夢について発表しており、直喜は「ママのようにニュースを発信する人になりたい」と述べていた。何か違和感を感じ、発表資料を見てみると、そこには「ママ浮気疑いパパの財布強奪」や「家庭放り同僚と不倫息子暴露」等、自分が手がけてきた記事と同様13.5文字の見出しが躍っていた。怒り狂う香織を前に、直喜は「ママのマネだよ」ときょとんとした顔で言った。

まとめ・感想

作者が『世にも奇妙な物語』に憧れて描いたというのにも納得の、少し気味が悪く、それでいてくせになるような不思議な作品です。普段の朝井リョウさんの若者の心情を繊細に描くような作品ではなく、一風変わった作品となっています。各話で登場人物が全く異なる短編集となっていますが、どの作品も読み始めたら止まらなくなるような先が気になる展開となっています。

モンスターペアレンツやネットニュースの質の問題等、現代を風刺する内容も多く含まれており、読みながら考えさせられる作品です。

この作品は、朝井リョウさんの他の小説とは雰囲気が異なり、他の作品とのつながりもないため、朝井リョウさんの作品を全く読んだことがないという方にもおすすめの作品です。また、1話完結の短編集となっているため、移動時間の読書等、まとまった時間が取れない方も是非読んでみてください。

お付き合いありがとうございました。