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『何様』のあらすじと感想|ネタバレあり

朝井リョウさんの代表作『何者』のアナザーストリーです。『何者』に登場した人物たちの隠された顔や、性格の裏付け等、『何者』を更に掘り下げた内容となっています。

『何様』は7月に文庫版も出版され、さらに手に取りやすくなったため、『何者』を読んだ方も、まだ読んでいないという方にもおすすめの作品です。

『何様』の作品情報

題名『何様』
著者朝井リョウ
発行所株式会社新潮社
発行日2019年7月1日
ページ数409頁
新潮社
¥737
(2019/11/20 23:26:11時点 Amazon調べ-詳細)

朝井リョウ・作者情報

1989(平成元)年、岐阜県生れ。早稲田大学文化構想学部卒業。2009年『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。2011年『チア男子!!』で高校生が選ぶ天竜文学賞、2013年『何者』で直木賞、 2014年『世界地図の下書き』で坪田譲治文学賞を受賞。ほかの著書に『もういちど生まれる』『スペードの3』『武道館』『世にも奇妙な君物語』『死にがいを求めて生きているの』などがある。
https://www.shinchosha.co.jp/writer/4436/

あらすじ(ネタバレなし)

朝井リョウさんの代表作『何者』のアナザーストーリー。『何者』に登場したキャラクターたちの背景が描かれている。光太郎の高校時代や、理香と隆良の出会い等の作品が入った短編集。

『何者』では就活に隠され見えなかったキャラクターたちの性格や生い立ちを知ることが出来る。

登場人物紹介

  • 光太郎:拓人の同居人。天真爛漫な性格で、就活が始まるまではバンドに命を懸けていた。
  • 理香:プライドが高く、自分の思っていることを素直に伝えられない性格。最近まで姉とシェアハウスをしていた。

書き出し紹介

指の腹が痛い。汗で滑りそうになるピックを、もう一度ぎゅっと掴む。

ストーリー(ネタバレあり)

この先、ネタバレがあります。ご注意ください。ネタバレ部分は赤字で表記します。

水曜日の南階段はきれい

高校3年生で、受験を控えた神谷光太郎は、受験前最後のゲリラライブを終えた。高校生でバンドを組んでいた光太郎は、不定期に、金曜日の放課後校庭でゲリラライブを行っていた。しかし、それも受験が間近に迫った今、受験に専念する必要が出てき、受験に受かるまではライブを行わないようにしようと決めた。光太郎には御山大学に入り、御山大学の軽音部MUMCに入るという夢があった。しかし、現段階の光太郎の学力では合格は難しく、特に英語の学力が足りていなかった。

そこで、英語力を伸ばすことが必要だと考えた光太郎は、クラスで英語が得意な夕子さんに、英語を教えてもらえるよう頼みこみ、毎日一緒に勉強をすることになった。そんな夕子さんは、掃除が好きで、いつも水曜日は階段の掃除、金曜日は窓の掃除をしていた。夕子さんとは、すぐに仲良くなり、放課後夕子さんと他愛もない話をするのが光太郎の楽しみになった。

光太郎の通う高校には、卒業文集の表紙を好きな子と交換するという伝統があった。ある日、夕子さんは光太郎に文集の表紙を交換したいと申し出た。夕子さんが気になっていた光太郎はその申し出を快諾し、夕子さんに恋心が芽生えるのを感じた。

そして努力の甲斐あって、光太郎は第一志望の御山大学に見事合格することが出来た。それからは学校に行くこともほとんどないまま過ごし、久しぶりに卒業式の日に登校すると、先生からも大学合格を祝われた。その時初めて光太郎は夕子さんに自分の合格をまだ告げられていないことに気づいた。一刻も早く夕子さんに合格を伝え、文集の表紙を交換したいと思っていたが、式が終わるとすぐに夕子さんは帰ってしまっていた。

ふと思いつき、いつも掃除していた窓を見に行くと、そこには文集の表紙が立てかけてあり、夕子さんからのメッセージが残されていた。ずっと志望校を明かさなかった夕子さんは、毎年1人受かるか受からないかであるコロラド州の大学に留学することが決まったこと。そして将来は翻訳家になりたいという夢があること。掃除好きだと思わせるために、水曜日は階段、金曜日は窓を掃除していたが、実は金曜日に行われる光太郎のゲリラライブを見るために窓を掃除していて、それをごまかすために水曜日は階段を掃除していたことが明かされていた。

それでは2人組を作ってください

理香は姉と一緒に暮らしていた。しかし、その姉が就職し、社宅に移るという。家賃の関係上、今の家に一人で住むことは難しく、理香は早急に新しいルームシェアの相手を見つける必要があった。

その頃、『ログハウスライフ』というシェアハウスを行う男女の様子を撮影するドキュメンタリー番組が人気を博し、理香の周りでも『ログハウスライフ』を見ている友達は多かった。ある日、理香が友達と話していると『ログハウスライフ』の話題が出た。お洒落な家具に囲まれ、楽しそうにシェアハウスをする様子は若者の心をつかみ、理香の友達の朋美も真剣にシェアハウスをすることを考え始めたようだった。それを聞いた理香は、自分の家もインテリアを整え、朋美を新しいシェアハウスの相手に誘おうと考えた。

そうと決まればすぐに行動しようと考え、理香は休みを利用して、『ログハウスライフ』で紹介されていた家具を買いに出かけた。そこで好みの家具を見つけ、購入しようとしたが、あいにく在庫がなく、取り寄せになるとのことだった。その家具屋で出会ったのが店員の宮本だった。宮本は、お洒落な家具が自分に一番似合うというような雰囲気を醸し出している割に、どこか不安そうで危うげだった。

家にあう雑貨を一緒に選んでほしいという名目のもと、宮本を休みの日に呼び出し、一緒に買い物に出かけた理香は、宮本が同じ大学に通っていることを知った。朋美の好みを思い出し、雑貨を選び、購入した。そして、前回購入した家具の組み立ての予定を宮本と立てた。

雑貨が揃うと、理香は朋美を家に招待した。他愛もない話をし、食事をしていると、朋美が「本格的にシェアハウスを考え始めた」と言い始めた。そこで、理香が今こそ一緒にシェアハウスをすることを誘おうとすると、それより先に朋美は、別の友達と早速物件を探しに行く約束をしたと言ってきた。

後日、宮本が家具の組み立てをしに、理香の家を訪れた。そこで、理香は1つの賭けにでた。宮本をルームシェアの相手に誘ったのだ。

まとめ・感想

この作品は、朝井リョウさんの代表作である就活小説『何者』のアナザーストーリーとして位置づけられています。『何者』では就活生として描かれていたキャラクターたちが、高校生や就活前の大学生として登場します。『何者』以前のキャラクターということで、主人公たちの気持ちがまだ未熟で、幼い様子が見事に表現されていると感じました。

「水曜日の南階段はきれい」で描かれる夕子さんの行動等が、高校生らしく、読んでいて愛おしい気持ちになりました。この高校生や大学生らが『何者』においては周りを牽制しながら就活に挑んでいる様子が描かれており、成長と共に、就活の威力を強く感じさせられました。

この作品は『何者』のアナザーストーリーとなっているため、1度『何者』を読んだことのある方に1番おすすめしたいのですが、是非この『何様』を読んだ後、もう一度『何者』を読んでみることをお勧めします。今までは見えなかった繋がりや心情の変化等が見え、さらに楽しめること間違いなしです。

お付き合いありがとうございました。