『桐島部活やめるってよ』に並ぶ、朝井リョウさんの代表作です。就活に挑む学生のリアルな姿を描く作品です。現代の学生に特有なSNSの活用など、朝井リョウさんらしい若者の生活や心情が描かれています。
映画かもされているため、小説と合わせて、是非1度見てみてください。
『何者』の作品情報
題名 | 『何者』 |
---|---|
著者 | 朝井リョウ |
発行所 | 株式会社新潮社 |
発行日 | 2015年7月1日 |
ページ数 | 346頁 |
朝井リョウ・作者情報
1989(平成元)年、岐阜県生れ。早稲田大学文化構想学部卒業。2009年『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。2011年『チア男子!!』で高校生が選ぶ天竜文学賞、2013年『何者』で直木賞、 2014年『世界地図の下書き』で坪田譲治文学賞を受賞。ほかの著書に『もういちど生まれる』『スペードの3』『武道館』『世にも奇妙な君物語』『死にがいを求めて生きているの』などがある。
https://www.shinchosha.co.jp/writer/4436/
あらすじ(ネタバレなし)
就活を控え、就活対策に取り組む就活生の4人。一見お互い協力し合っているようで、実態はお互いの牽制のし合いだった。就活により、削られていく精神状態の中、4人はどのような行動をとるのか。
SNSを利用し、懸命に自分を確立しようともがく現代の就活生の姿を描いた直木賞受賞作品。
登場人物紹介
- 拓人:クールで冷静な就活生。光太郎と同居している。
- 光太郎:拓人の同居人。天真爛漫な性格で、就活が始まるまではバンドに命を懸けていた。
- 瑞月さん:光太郎の元カノ。真面目で堅実な性格。留学経験がある。
- 理香:瑞月さんの友達。留学経験があり、就活に対する意識が高い。
書き出し紹介
ドン、と、誰かの方が当たって、リズムが崩れた。
ストーリー(ネタバレあり)
この先、ネタバレがあります。ご注意ください。ネタバレ部分は赤字で表記します。
就活生の拓人は、同い年の光太郎とシェアハウスをしている。少し前までバンド活動に精を出しており、就活準備をしていなかった光太郎の就活への危機感は強く、就活対策を拓人と一緒にしていた。そんなとき、光太郎の元カノであり、拓人の友達でもある瑞月さんとその友達の理香も就職活動に取り組んでいることを知った。しかも、理香は彼氏の隆良と同棲しており、拓人たちと同じアパートの上の階に住んでいるということもあり、4人は一緒に就活対策に取り組むようになった。
瑞月さんと理香は就活に対する意識が高く、ESの添削や面接の練習を学校に行って、行っていた。そんな2人のことを拓人は少しばかにして眺めていた。一方で、理香の彼氏の隆良は就活はしないと宣言していて、就活を行うこと自体に、馬鹿にした態度を示していた。そんな隆良に対しても、拓人は呆れた気持ちをもっており、一歩引いた目線から眺めていた。
光太郎は高校時代の思い出の子が忘れられないと言い、その子に会うために出版社を目指しており、留学経験のある理香は、英語や留学経験を活かせるような会社を志望していた。一方で、瑞月さんは、親のためということもあり、大手で安定した会社を目指していた。それぞれの志望は異なりながらも、実際に就職活動が始まると、4人の間にはピリピリとした雰囲気が流れるようになった。天真爛漫で、誰とでも明るく話すことのできる光太郎は、選考も順調に進んでいるようで、難関とされる出版社への就職も見えてきていた。また、瑞月さんも順調に面接に進んでいるようだった。
一方で、理香はESや選考テストで落とされてしまうことも多く、就職活動は難航しているようだった。そして、就職活動をしないと宣言していた隆良も実は就職情報を集めていることが分かってきた。自分を貫き、強気でいるようで、実は弱さや不安をもち、揺らいでいる2人の様子に、拓人は一人失笑していた。
そんな中、まず1番に瑞月さんが内定をもらった。内定先は大手企業のエリア職だった。5人で瑞月さんの内定祝賀会をやりながらも、まだ進路が定まっていない他の4人の空気は少しピリピリしているように感じた。そして、瑞月さんが総合職ではなく、エリア職での採用であることに安心感を抱いているようだった。嫉妬が渦巻き、素直にホメることのできない空間を、拓人は傍観していた。
そんな折、ついに光太郎も内定をもらった。大手ではないが、希望通り中堅の出版社から内定をもらったという。これでついに、内定をもらっていないのは拓人と理香だけになった。いつも通り、履歴書を印刷しようと、理香の家を訪れると、拓人が光太郎の会社の悪口をネットで検索していたことがバレてしまった。それを皮切りに、理香は拓人に対して思っていたことをぶちまけてきた。実は、拓人は去年就活に失敗しており、今年が就活2年目であること。それでもクールでかっこいい自分にこだわり続け、未だに内定を一つももらえていないこと。実はTwitterで裏アカウントをもっており、傍観者として理香たちの悪口を言っていること。
ショックを受ける拓人に、理香は「そんなことをしてかっこよく演じていたって、自分は何物にもなれないのだ」と告げた。
まとめ・感想
就活にあたり、自らを探し、どう自分を確立しようかともがく就活生の姿がリアルに描かれています。この就活生等の心情表現のリアルさに、驚かされます。これは、朝井リョウさん自身が2015年まで、会社員と作家を兼業していたという経歴に基づくのではないかと感じました。SNSを多用する場面も多く、現代にぴったりの作品だと感じました。
この作品は、朝井リョウさんの代表作となっており、映画化もされています。また、最近では『何者』のアナザーストーリーである『何様』も発売されており、併せて読むことで、より物語の世界を楽しむことが出来ます。あまりにも就活にたいする描写がリアルなので、就活を終えた学生にこそ是非読んでいただきたい作品です。共感すること間違いなしです。
お付き合いありがとうございました。