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『朝が来る』のあらすじと感想|ネタバレあり

特別養子縁組によって迎えた、1人の男の子をめぐる物語です。

不妊治療等の問題が取り上げられており、とても考えさせられる1冊です。

「ツナグ」や「鍵のない夢を見る」等の作品を手がける、辻村深月さんの作品です。

 

では、読み進めていきましょう。

『朝が来る』の作品情報

題名朝が来る
著者辻村深月(つじむらみづき)
発行所株式会社 文藝春秋
発行日2018年9月10日
ページ数358頁

作者情報

  • 辻村深月(つじむらみづき)

小説家。『ツナグ』『鍵のない夢を見る』等の作品を執筆する。『ツナグ』は、映画化もされており、俳優の松坂桃李さん主演で、話題を呼んだ。

映画の脚本も手掛けており、映画『ドラえもん のび太の月面探査記』の脚本を担当している。

あらすじ(ネタバレなし)

不妊治療の末、特別養子縁組を組み、生まれたばかりの男の子を、子供として引き取った夫婦がいた。夫婦は、男の子を、我が子として、可愛がり、大切に育てていた。生みの親からは、涙ながらに、託された我が子だった。

しかし、ある日、生みの親を名乗る人物から、子供を返してほしいと連絡があった。

血はつながっていなくとも、親の愛をひしひしと感じる、感動の物語です。

登場人物紹介

栗原朝斗(くりはらあさと):特別養子縁組によって、栗原家に迎え入れられた子供
栗原佐都子(くりはらさとこ):朝斗の母。
栗原清和(くりはらきよかず):朝斗の父。
片倉ひかり(かたくらひかり):朝斗の産みの母親。

書き出し紹介

電話が鳴った。またかもしれないと、佐都子は身構える。

ストーリー(ネタバレあり)

第1章 平穏と不穏

特別養子縁組によって、栗原夫妻に引き取られた朝斗は、我が子として、何不自由なく生活していた。

そんなある日、朝斗の通う幼稚園から電話があり、朝斗が、同級生の大空(そら)くんをジャングルジムから突き落としたようだと伝えられる。

一方で、朝斗はそれを否定しており、母の佐都子は、周りになんと言われようと、朝斗を信じることを決意する。

大空くんの母親を中心に、周りからは白い目で見られ、佐都子は辛い日々を過ごした。

しかし、ジャングルジムから飛び降り、ケガしたことを、隠したかった大空くんが、朝斗のせいにしたことを白状する。

それを聞いた佐都子は、朝斗への信頼と、誇りで胸が満たされるのを感じた。

関係が悪化していた大空くんの一家とも、仲直りし、朝斗と佐都子は、明るい幼稚園生活を取り戻した。

そんな頃、名前を名乗らず沈黙を貫く、不審な電話が、栗原家に頻繁にかかってきていた。

ある日、その電話の主は、ついに声を発し、朝斗の実の母親である片倉ひかりだと名乗る。

そして、朝斗を自分の元へ返してほしいというのだった。

話を聞いた佐都子は、ひかりと実際に会って、話をすることを決める。

第2章 長いトンネル

佐都子と清和は、結婚後も2人の時間を大切にし、子供をもうけないまま、35歳を迎えていた。

佐都子の母に、出産をせかされ、ついに2人は不妊治療を始める。

タイミング法等を試しても上手くいかず、検査を行ってみると、夫は無精子症であると告げられる。

それからの治療は、とても苦しいものだった。治療のために、飛行機で、岡山にある病院まで通う日々。

しかし、子供を授かることはできず、ついに2人は、治療をやめ、夫婦2人で生きていくことを決める。

そんな時に見たのが、「ベビーバトン」という名の、特別養子縁組を仲介する団体を、紹介する番組だった。

佐都子と清和は、食い入るように番組を見たのち、その団体の養親に登録したのだった。

それから、1年が経たない頃、佐都子達に、養子が見つかったとの連絡がきた。

その子どもが、朝斗だった。

朝斗の母親は、中学生で、最後まで朝斗を育てたいと願っていたそうだ。

栗原夫婦に子供を引き渡す際にも、朝斗へ向けて手紙を書き、朝斗に幸せになってほしいと願っていた。

そんな朝斗の母親を名乗る女が、栗原家にやってきた。

あれほど朝斗のことを思っていたはずの母親が、「朝斗を返してほしい。そうでなければ、お金を払ってほしい。」と言ってきたのだった。

それを聞いて、佐都子と清和は、あれほど朝斗を思っていたはずの母親が、そんなことを言うはずがないと判断し、彼女を追い返す。

それから約1か月後、栗原家に、刑事が訪れ、朝斗の母親を名乗る女を見なかったかと問うのだった。

話を聞くと、彼女は、勤務先から現金を盗み、逃走しており、捜索されているとのことだった。

第3章 発表会の帰り道

中学生になった片倉ひかりは、学校の人気者である、麻生巧(あそうたくみ)と付き合い始めた。

ひかりの両親は、厳しく、まじめな人だった。

そんな両親に、嫌気がさしていたひかりは、大人っぽい巧と過ごす時間が、とても楽しく、優越感を味わっていた。

ある日、ひかりと巧は、ひかりがよく両親と訪れていた喫茶店で食事をした。

しかし、大好きだったはずのパンケーキは味気なく、たばこのにおいを嗅ぐと気持ちが悪くなった。

何かがおかしいとひかりが気づいたのは、そのしばらく後のことだった。

ひかりは妊娠していた。

しかも、気づいた時には、中絶が可能な期間を過ぎていた。

それから、ひかりと巧は会うことを禁じられた。

妊娠が発覚した後も、しばらくひかりは学校に通っていたが、妊娠8か月目を過ぎたあたりで、ひかりは、出産までの準備をするために、遠くの施設に行くことが決まった。

ひかりの両親たちは、ひかりの子供を、特別養子縁組を仲介する「ベビーバトン」という団体に預けることを、決めていた。

ひかりが行くことになったのは、その団体の施設だった。

ひかりは、子供を養子に出すのは、嫌だと拒んだが、両親の決定は揺るがなかった。

もはや、ひかりに家での居場所はなかった。

「ベビーバトン」の施設で過ごす間も、ひかりは常に、子供のことを思っていた。

5月10日、ひかりは出産した。

ひかりの子どもは、神奈川の夫妻に引き取られることが決まった。

子どもを渡すとき、ひかりは子どもに向けた手紙を渡し、最後まで名残を惜しんでいた。

それから2年後、ひかりは再び広島を訪れていた。

懐かしい景色をもう一度見てみたくなったのだ。

ひかりが滞在していた施設を訪れた際に、ふと自分の子どもを引き取った夫婦の住所を見つけてしまう。

その後も広島に滞在し、新聞配達の仕事をしていたひかりだったが、そこで出会った友人に、借金の肩代わりをさせられてしまう。

取り立てから逃げるために、ひかりは、横浜で新たに仕事を始めたが、そこも取立人に、見つかってしまった。

借金を払うために、ついにひかりは、店のお金を盗んでしまう。

取立人からは、解放されたが、店のお金を盗んだことがばれてしまったひかりは、とっさに、すぐに返すと嘘をついてしまう。

その時に頭に浮かんだのが、ひかりの子供の養親となった栗原夫妻だった。

「あの人たちなら、子どもを守るために、お金を払ってくれるだろう」そんな暗い気持ちがひかりの中に浮かんだ。

第4章 朝が来る

いざ、栗原夫妻に会うと、夫妻は、ひかりのことを「朝斗のお母さんは、あなたではない」という。

ひかりが当時、子どもに向けて書いた手紙を見せられたひかりは、自分がバラバラになるような感情を覚え、「私は、朝斗の母親ではない。」と答えてしまう。

栗原家を出てから、ひかりは茫然とあたりをさまよっていた。

「もう消えてしまいたい」と思ったその時、後ろから声をかけられた。

それは、刑事から話を聞き、ひかりを迎えに来た、朝斗の母親と朝斗だった。

ひかりを優しく受け入れてくれる2人を前に、ひかりは涙が止まらなかった。

まとめ・感想

朝斗の母親を名乗る女の正体が気になり、推理小説のような気持ちで、読んでしまいました。

重い内容のテーマを取り扱っていますが、辻村深月さんならではの、ストーリー性で、どんどん読み進めることが出来ました。

主人公の気持ちが、痛いほどに伝わってきて、私まで、物語に入り込んだかのようでした。

子どもがいる方にも、いない方にも、これからの時代を生きる全ての人に読んで欲しい1冊です。

お付き合いありがとうございました。