突然現れた「お兄さん」を名乗る人物をもとに、今まであった人生が、少しづつ変わっていく、不思議で心温まる物語です。
『僕らのごはんは明日で待ってる』や、「天国はまだ遠く」等を執筆した、瀬尾まいこさんの作品です。
「お兄さん」と関わっていく中で、関わる全ての人の、温かみを感じることが出来ます。
想像もできない展開に、驚かされることでしょう。
では、読み進めていきましょう。
「春、戻る」の作品情報
作品名 | 春、戻る |
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著者 | 瀬尾まいこ(せおまいこ) |
発行所 | 株式会社 集英社 |
発行日 | 2017年2月25日 |
ページ数 | 215頁 |
作者情報
- 瀬尾まいこ
小説家。「天国はまだ遠く」や「僕らのごはんは明日で待ってる」等の作品を手がける。最近では、著書「僕らのごはんは明日で待ってる」が、中島裕翔さんや、新木優子さん出演で、映画化されました。
中学校の教師を務めながら、本を執筆していたこともある。また、エッセイも執筆しており、教師時代の話をもとにしたものもある。
あらすじ(ネタバレなし)
結婚を目前にした望月さくらの前に、現れたのは、「お兄さん」を名乗る男性だった。しかし、さくらに兄はおらず、「お兄さん」を名乗る男性は、さくらより一回りも年下だった。
こんな不思議な展開から、物語は始まるが、「お兄さん」を軸に、さくらの世界は段々と動いていく。次第に、さくらは、忘れ去ろうとしていた記憶を思い出していくのだった。
関わる全ての人から愛され、大切にされていることを知ることができる、心温まる物語です。
書き出し紹介
ストーリー(ネタバレあり)
この先、ネタバレがあります。ご注意ください。
1~3
料理教室に通うさくらの前に、突然、「お兄さん」を名乗る青年が現れた。しかし、さくらに兄はおらず、青年はさくらより一回りも年下だった。
戸惑うさくらを前に、「お兄さん」は、楽しそうにさくらに結婚のお祝いを告げる。
その日から、お兄さんは、頻繁にさくらの前に、現れるようになった。
4~6
ある日、お兄さんの後を、ひっそりとつけてみると、お兄さんの、誰とでもすぐに打ち解けられる温かい人柄を知ることができた。
段々と、お兄さんに打ち解けたさくらは、結婚相手の山田さんに、不思議なお兄さんのことを打ち明ける。意外にも、山田さんは、驚くこともなく、お兄さんのことを受け入れてくれたのだった。
そんなある日、さくらの家を訪れたお兄さんは、さくらに、料理を教えることを宣言した。
7・8
お兄さんの料理教室が始まった。驚くことに、お兄さんの料理の腕前は、なかなかのもので、美味しい料理を作ってくれるのだった。
ある日、お兄さんの熱烈な申し出で、山田さんとさくらとお兄さんの3人で、遊園地に行くことになった。お兄さんに振り回されながら、遊園地で遊ぶばかりであったが、1日を通し、さくらと山田さんのなかも深まったように感じた。
9~11
お兄さんとお兄さんの彼女のデートについていくことになったさくらだったが、お兄さんの彼女に勘違いされ、お兄さんと彼女の関係を悪くしてしまう。
焦るさくらを前に、お兄さんは、自分の過去の話をし始める。
その話を聞くうちに、さくらはお兄さんとのつながりを思い出しそうになるが、自ら記憶に蓋をしてしまう。
12~14
過去の話をした日から、お兄さんはさくらの前に現れなくなった。
さくらが連絡してみても、返事はなく、心配になったさくらは、山田さんを連れて、お兄さんの最寄り駅まで探しに行くも、お兄さんは見つからなかった。
15・16
何もなかったかのように、お兄さんがさくらの前に現れた。久しぶりのお兄さんに、さくらは水まんじゅうを作って、披露する。水まんじゅうは失敗に終わったが、お兄さんは、自分の父親に頼まれて、さくらの様子をうかがっていたことを打ち明ける。
その話を聞くうちに、さくらは、お兄さんのお父さんと自分との関係を思い出し始めていた。
17・18
結婚を間近に控え、ついにお兄さんの料理教室は、最終回を迎えた。最終回に、お兄さんが選んだレシピは、きんぴらだった。
そのきんぴらを作りながら、さくらは、お兄さんに関する記憶が完全によみがえるのを感じていた。
時はさかのぼり、大学を卒業したさくらは、長年の夢であった小学校教師になり、岡山県のある学校に赴任した。期待に胸を高鳴らせながら迎えた新生活だったが、さくらは小学校での生活に、全くなじめず、子供たちとの関係性も上手くいかなかった。
そんな状況に悩むさくらを、小学校の校長である小森校長は、娘のように気にかけ、よく家での食事に招いたりしていた。
その小森家の子供であったのが、「お兄さん」だったのだ。
辛い状況に耐え兼ね、1年で教師を辞めたさくらのことを、小森校長や、お兄さんはずっと心配しており、さくらが東京に戻ってからも、お兄さんを通して、様子をうかがっていたのだという。
当時の思い出話をしながら、辛いばかりだと思っていた過去に、楽しさや人の優しさがあったことを感じた。
19・20
お兄さんの正体について、山田さんに話していると、山田さんが、ふと行く予定のなかった、新婚旅行にいこうと提案する。
その行先は、さくらが小学校教師として、1年間赴任していた岡山に決まった。
まとめ・感想
「お兄さん」が何者なのか、読み始めからずっと気になり、最後まで一気に読んでしまいました。
想像もしなかった展開に、驚かされましたが、節々に人の温かみを感じ、私まで温かな気持ちになりました。
自分にとって、上手くできなかったと思っていることでも、相手にとっても失敗とは限らないのだと気づきました。
人間関係に疲れた方、失敗に落ち込んでいる方にこそ読んでほしい1冊です。
お付き合いありがとうございました。