内容紹介
「人生100年時代」。
これまでは「教育→仕事→引退」の3ステージが一般的でした。
しかし寿命が伸びることにより長く働くことが一般的になり、老いに対する概念やパートナーシップ、家族のあり方、ライフステージが変化しつつあります。
これまでの画一的な生き方から、数多くの移行や変化を経験をする「マルチステージ」の生き方が求められる中では、どのように人生設計を考えるかが重要になります。
本書は長寿を災厄ではなく恩恵として享受するために、私たち個人や企業、社会全体に何が求められているのかを知ることができます。
数多くの移行や変化を経験する中で、自分にとって何が大切なのか、何を軸に生きていくのか考えさせられる一冊です。
題名 | LIFESHIFT 100年時代の人生戦略 |
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著者 | リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット |
出版社 | 東洋経済新報社 |
発行日 | 2016年11月3日 |
ページ数 | 399ページ |
言語 | 日本語 原題:英語『The 100-Year Life: Living and Working in an Age of Longevity』 |
こんな人にオススメ
・将来や未来が不安な人
・自分らしい生き方を模索している人
・人生設計を考え直したい人
著者紹介
著者名
リンダ・グラットン
組織論学者、コンサルタント。
ロンドン・ビジネス・スクールの管理経営学教授。
経営コンサルタント会社Hot Spots Movement創業者。
世界経済フォーラムのフェローとして、リーダーシップ委員会を主催、シェル、ユニリーバ等国際企業と共同研究も行なっている。2017年には日本の「人生100年時代構想会議メンバー」に唯一外国人として招聘された。
アンドリュースコット・スコット
ビジネススクール経済学部教授、前副学部長
ハーバード大学、ロンドン・スクール・オブエコノミクス、オックスフォード大学で教鞭をとる。
ロンドンビジネススクールではマクロ環境要因がグローバル競争環境に与える影響を中心に教鞭をとり、教育優秀授業賞を受賞。
研究における専門分野は財政・金融政策、ビジネスサイクル、長寿化。
現在は英国予算責任者の諮問委員も務めながら、教育及びコンサルティングを通じて金融業から製造業にいたるまで幅広い経営者や大臣の支援や指導も行なっている。
『LIFESHIFT 100年時代の人生戦略』要約
『人生100年時代とは』
本書では「長く生きること」を前提に、これからのライフステージをどう過ごすか、何を大切にすべきかが書かれています。
国連人口基金(UNFPA)の発表によると、2022年5月時点の日本人の平均寿命は男性88歳、女性82歳で
日本は世界でも特に平均寿命が長い国だとされています。
2007年に日本で生まれた子供の半分は、107年以上生きることが予想される。いまこの文章を読んでいる50歳未満の日本人は、100年以上生きる時代、すなわち100年ライフを過ごすつもりでいた方がいい。
と著者は言います。
現在高齢化や年金問題などが浮き彫りになる中で「誰もが100年生きることが当たり前になる」時代を私達は生きているのです。
長寿化を「災厄」ではなく「恩恵」として受け取るために私たちに必要なものは何か。
そして、どのようなライフプランを考えていけばいいのでしょうか。
『100年時代を生きる上で重要な「見えない資産」』 「有形資産」と「無形資産」
寿命が延びれば、働く期間が長くなり、貯蓄の重要性も高まる。長い人生の間には、産業や雇用のあり方も大きく変わる。ひとことで言えば、100年ライフがもたらすのはこういう未来だ。
と著者は言います。
しかしお金と仕事の面だけ見ていては、人間の本質を無視することになる。
とも指摘します。
これまでは、どちらかといえば不動産資産、金融資産など、目に見える資産である「有形資産」が重視されることが多い時代でした。
しかし長く生きることが前提となり、心身の健康に対してこれまで以上に気を配る必要性が高まり、健康、より良い人間関係など、目に見えない「無形資産」が重視される時代へと変化しています。
著者は
無形の資産は、私たちの人生のあらゆる側面できわめて大きな役割を果たしている。お金は確かに重要だが、ほとんどの人はそれ自体を目的にしていない。私たちがお金を稼ぐのは、それと交換にさまざまなものが得られるからだ。私たちはたいてい、やさしい家族、素晴らしい友人、高度なスキルと知識、肉体的・精神的な健康に恵まれた人生を「よい人生」と考える。これらはすべて無形の資産だ。
と言います。
3つの無形資産
そして、著者は無形資産を大きく3つに分けて説明しています。
①生産性資産
②活動資産
③変身資産
それぞれ詳しく見ていきます。
①生産性資産
生産性資産とは人が仕事で生産性を高めて成功し、所得を増やすのに役立つ要素を指します。
また、長く生産的な人生を送るには「スキル」と「知識」に投資することが重要だと著者は言います。そしてスキルや知識は経済的な価値を生み出せる希少性のあるものが重要だとし、
大学院教育を受ける人が増える背景には、希少性への期待がある。またライバルより優位に立つために、スキルや知識は模倣困難なものでなくてはならない
と言います。
そして「機械に代替されにくい」という条件をクリアするのも重要ですが、テクノロジーやAIの進歩により、この条件を満たすのが難しくなりつつあると著者は指摘します。
テクノロジーやAIが大きく飛躍した時、価値を失わないスキルや知識が重要になります。
将来的には、イノベーション能力と創造性の価値が大きくなり、アイデアの創造を後押しする教育の重要性が高まる。
と著者は指摘しています。
また
21世紀には、他人が複製したり購入したりできるようなアイデアとイノベーションを創出することを通じて、経済的な価値が生み出される時代になる。その傾向は著者が教えているロンドン・ビジネススクールでもすでに表れている。学生の間でも企業の間でも、アイデアとイノベーション、創造性、起業家精神が重視されはじめているのだ
とも言います。
こうした潮流を受けて、人間ならではのスキルや判断力が重要になります。
加えて今後はどんなスキル、知識を学ぶかだけでなく、学び方も大きく変わると指摘します。特に、「経験学習」の比重が高まることが予測されます。「経験学習」とは、テキストや教室にとどまらず、実際の活動を通して学ぶことです。
経験学習の価値が高まるのは、一つには、インターネットとオンライン学習が発展して、単純な知識なら誰でも簡単に獲得できるようになるからだ。知識の量ではライバルと差がつかず、その知識を使ってどういう体験をしたかで差がつく時代になるのだ
と著者は言います。
経験学習が重視されはじめた背景には、「暗黙知(経験や勘、直感などに基づく知識、言語化しても、その意味が簡単には伝わらない知識のいわゆる経験的知識)」の重要性の高まりがあります。
暗黙知は、身につけるのは簡単ではないが、きわめて大きな経済的価値をもつ。それは知恵と洞察と直感の土台であり、実践と繰り返しと観察を通じてはじめて獲得できるのもだからだ。
雇用主も、机上の知識だけでなく、実際の問題解決能力を持っている人物を欲しがるようになる可能性が高い。大学や大学院で経験学習の導入が進むことは間違いないが、教育機関以外の場での実践も増えるだろう。
机上の知識だけでなく実際の活動を通して知識、経験を得ることができる「経験学習」が大切になります。
すなわち、自分が実際に得た知識、経験が重要になるのです。
加えて重要になるのが小規模な仕事仲間のネットワーク、それも相互信頼で結ばれた強力なネットワークです。
このつながりは「ポッセ」と呼ばれ、互いに似たようなスキルや専門知識を持ち、自分の培った経験や知識を活かしながら、職業上の成長を支え合うことができる人的ネットワークとなります。
ここで重要な要素は、その人がどこでどのような活動や経験をしてきたかや、SNS上の「評判」です。
新しい事業を立ち上げる際などに、その人の人となりがわかり、信頼に繋がるようなものが必要になるためです。
著者は
「公正さと誠実さ、実行力、柔軟性、そして信頼性に関する高い評判は、さまざまな役割や職で価値がある。
と言います。
TwitterやFacebookといった様々なSNSの発達により、個人の印象や価値に関する情報が拡散されやすくなったことが評判の重要性に繋がっているのだと言います。
②活動資産
活動資産とは健康とプライベートにおける親しい友人や人間関係を指します。
仕事、プライベートに限らず、様々な活動を長く続けるには健康であることが重要です。
脳に良い食事をとり、質の高い睡眠、運動をすることが大切です。
また、健康には身体的なものに限らず、精神的なものも含まれます。
プライベートで信頼でき、心の許せる友人がいるということも重要な要素の1つです。
③変身資産
変身資産はキャリアチェンジや人生における新しいステージに移行する際に必要な能力、スキルを指します。
自分に対する知識、理解がある、すなわち「自己理解」ができていること。大規模で多種多様な新しい人的ネットワークがあること。新しい経験に対して開かれている姿勢があることが大切です。
ライフスタイルの多様化により、自分に合った環境や出会いを探すためにはこのような無形資産が重要になるのです。
100年時代の新たなシナリオ
これまでの「教育、仕事、引退」の3つのステージが主流だったステージを歩む人が減り、生き方の多様化が進み、次のような働き方が増えるのではないかと著者は言います。
①エクスプローラ
②インディペンデンスプロデューサー
③ポートフォリオワーカー
①エクスプローラ
エクスプローラーは「探求者」や「冒険」「探査」を意味するように、生涯を通じて探検と旅を続ける人を指します。
大学を卒業後、すぐに働くことはせずに様々な場所へ行き、見聞を広げながら自分、社会についての理解を深める。そしてその後キャリアなどでその経験を活かすというような生きがあり方をします。
人生において空白期間を持つのです。
この時期を通して、「自分についての理解を深め、自分がどういう人間で、何を好み、何が得意なのかを見出していく。」と著者は言います。
自分にとって相性の良いものを探すのです。
このステージは「18歳〜30歳の時期、40代半ばの時期、そして70〜80歳ぐらいの時期が最適である」と著者は言います。
②インディペンデンスプロデューサー
インディペンデント・プロデューサーは「職を探すのではなく、自分の職を生み出す人」です。
どこかの企業に属するのではなく、独立、起業し自分のビジネスを立ち上げるのです。
起業したとしても、永続的にその事業を行うのではなく、短期間に様々な事業を行うのも特徴の1つです。
③ポートフォリオワーカー
ポートフォリオワーカーは、様々な活動を同時に行うのが特徴です。
会社員として働きながら副業で他の仕事をしたり、1つの企業に属するだけでなく様々な仕事や活動を同時並行的に行います。この働き方は、年齢問わず誰でも実現可能なものです。
現在は大きく分けるとこの3つの働き方やライフステージが提唱されていますが、今後さらに多様化が進むことで新たな生き方、働き方が生まれることも考えられます。
『100年時代を恩恵に変える生き方』
長寿化が進むということは、これまでしえなかった数多くの経験、体験ができ、多くの出会いがあるということでもあります。
本書を通じ、長く生きることを「厄災」ではなく「恩恵」として捉え、今自分には何ができるかを日々考えながら無形資産や有形資産を活用し、より良い未来を築いていきましょう!
実践ポイント
生活習慣を整えましょう
長い人生をよりよく生き抜くためには、健康な肉体、精神が必要です。
自分にあった適度な運動、質の良い睡眠、食事を心がけることが大切です。
自己理解を深めましょう
自分を知ることが、より良い未来を築くための一番の近道です。
日記をつけるなど、自分について深く知る時間や機会を持ちましょう。
副業をしてみる、あるいは自分でビジネスを立ち上げてみましょう
自分の得た経験、体験が重要になるため、新しいことに挑戦することが大切です。
今やってみたいこと、興味があることをどんどんやってみましょう。
感想・書評・学んだこと
現在長寿化に関することで発信されている情報の多くは、未来に希望を抱けなくなるようなネガティブなことが多いように思います。
本書は今生きることを肯定的に捉えられ、誰もが未来に希望を持ち生きていけるヒントがたくさん詰まっています。
不安になった時、どう生きていけば分からなくなった時、自分の人生に自信が持てなくなった時などに背中を押してもらえる一冊です。
最高の名言
長い人生には、変化と変身がつきものだ。
私自身あまり変化を好まず、つい新しいことにチャレンジするのをためらったり、現状に満足してしまいがちです。長い人生をより良いものにしていくために、新しいことを取り入れたり、チャレンジしたり、変化を楽しめるようになりたいと感じました。