1.内容紹介
日本国内だけでも約500万部以上刊行されている、D・カーネギー著の「人を動かす」。
大ベストセラーを誇る自己啓発書の中の名著です。
タイトルは意訳で、元タイトルは『How to Win Friends and Influence People』。
直訳すると「仲間を得て影響力を持つ方法」です。
この本ではD・カーネギー氏が多くの実話を元に、人間関係において重要な教えを30原則に分けて紹介しています。
「人を動かすとはどういうことか?」
「人間関係において重要なことは何か?」
人間関係に悩み苦しんでいる全ての方々へ捧げる、自分自身の考え方を変える方法が記された一冊です。
書籍タイトル | 人を動かす |
著者 | D・カーネギー |
訳者 | 山口博 |
出版年月日 | 2016/01/22(第1版) |
出版社 | 創元社 |
ページ数 | 320ページ |
言語 | 日本語(英語「How to Win Friends and Influence People」) |
2.こんな人にオススメ
・新しい環境に入ってこれから人間関係を築いていく人
・グループやチーム、組織のリーダーとしてマネジメントしていく人
・人間関係の原理原則を知り、他者と良好な関係性を築きたい人
3.著者紹介
D(デール)・カーネギー
D・カーネギーは1888年米国ミズーリ州の農家に生まれ、教師を志し、ウォーレンバーグ州立教員養成大学を卒業。その後中古車のセールスマンや俳優を目指し挫折するなど、さまざまな経験を重ねた。
大きな転機は、YMCAの夜間学校で話し方講座の講師として採用されたこと。カーネギーは人気講師となり、受講者も増え、仕事が軌道に乗った。
教師経験を経て、受講生に必要なものは話術だけでなく対人関係の技術とし、自身で教材を作成。作成過程での大量の読書、各界の名士・実業家へのインタビューを通して多くのエピソードを集める。
1936年に『人を動かす』を出版。大ベストセラー作家へ。その他著書に『道は開ける』『話し方入門』『人生論』『自己を伸ばす』などがある。
4.『人を動かす』要約
この本では人間関係の本質について、全部で30の原則が語られています。
それぞれの原則に対し複数のエピソードが掲載されているので、実話を元に学ぶことができるのが特徴です。
最初に「人を動かす3原則」について紹介します。
【人を動かす3原則】
1.盗っ人にも五分の理を認める
→悪事を働いた人にもそれなりの理由がある。
2.重要感を持たせる
→人間が持つ最も根強い衝動は「偉くなりたいという願望」である。
3.人の立場に身を置く
→人を動かす唯一の方法は、相手が好むものを手に入れる方法を教えることである。
ここでは批判や非難、苦情を言わず相手に心からの賛辞を送り、自尊心を満たしてあげることが重要だと述べられています。
自尊心を満たすとは、相手を肯定してあげることです。
例えば、どんなに悪事を働いた悪人でも、自分がやったことに対し反省をしない、むしろ「自分は正しいことをした」と死ぬ間際まで主張していました。このことから悪人ですらない人間は、より自分のことを正当化しようと働きかけるのは当然です。
つまり相手を批判・非難する行為は無意味で、かえって争いごとを引き起こす種になりえます。
また、相手の好きなものに興味を持ち、「どうすれば相手の欲求が満たされるか?」を考え提供することで、相手の自尊心を満たし行動を促すことができます。
人を動かすには「相手の立場に身を置き、その心の中に強い欲求を起こさせる」ことが重要なのです。
【人に好かれる6原則】
次は「人に好かれる6原則」です。
1.誠実な関心を寄せる
→相手の関心を引こうとするより、相手に純粋な関心を寄せる方が得られるものが多い。
2.笑顔を忘れない
3.名前を覚える
4.聞き手にまわる
5.関心のありかを見抜く
→相手が一番関心を持っていることを見つけ、話題にする。
6.心からほめる
人間は誰よりも自分のことが大好きな生き物です。
例え大切な友人やパートナー、家族がいたとしても、その人たちより自分のことを考えている時間の方が長いはずです。
皆さんも大勢の人と写真を撮ったとき、まず確認するのは自分の顔ではないでしょうか?
人に好かれるためには相手に誠実な関心を寄せて笑顔で話を聞き、何度も名前を呼んで、心からほめることが大切です。
【人を説得する12原則】
この章では「人を説得する12原則」について語られています。
1.議論を避ける
2.誤りを指摘しない
3.誤りを認める
4.穏やかに話す
5.“イエス”と答えられる問題を選ぶ
→相手に何度も“イエス”と言わせることで、話を前向きに持っていきやすくなる。
6.しゃべらせる
7.思いつかせる
→人は他人から押し付けられた意見より、自分で思いついた意見の方を大事にする。
8.人の身になる
9.同情を寄せる
→相手の考えや希望に対して同情を寄せる。
10.美しい心情に呼びかける
→相手に心から信頼され、正直な人間として扱われると不正はできない。
11.演出を考える
→単に事実を述べるだけでなく、相手の興味を添えて演出することで注意をひける。
12.対抗意識を刺激する
『1.議論を避ける』の中で
議論に負けても、その人の意見は変わらない
という言葉が出てきます。
人は間違っていることや自分の考えに反することに遭遇すると、指摘して正そうとします。
しかしこれではお互いに対立し、わかりあうことはできません。
なぜなら指摘された側は劣等感を抱いて自尊心が傷ついてしまうからです。
これでは相手の好意を勝ち取れません。
大切なのは、「人を動かす3原則」でも出てきたように、相手のことを批判・非難せず受け入れて相手を賞賛することです。
【人を変える9原則】
最後は「人を変える9原則」です。
1.まずほめる
2.遠回しに注意を与える
→直接批判をされると人は反発するので、問題点を遠回しに知らせる。
3.自分の過ちを話す
4.命令をしない
5.顔をつぶさない
6.わずかなことでもほめる
7.期待をかける
8.激励する
9.喜んで協力する
ここでも相手のことを「ほめる」という原則が登場しています。
我々は、ほめられたあとでは、苦言も対して苦く感じないものだ。
このように相手を認めることでこちらを受け入れてくれて、結果、話や意見を聞く姿勢になってくれます。それが良好なコミュニケーションへと繋がるのです。
5.実践ポイント
コミュニケーションを取るとき、つい自分が話す内容を考えて話を聞けていなかったり、相手の意見に対して否定的な意見を投げかけたりしていませんか?
話を聞いているつもりで、自分が次に話す内容を考えると話半分の理解になります。
相手の考えや意見を正そうとすれば、議論に発展してしまいます。
なのでまずは「相手に興味関心を持つ」という意識を持つことが大切です。
・相手が好きなことは何か?
・どうすれば気持ち良く話をしてもらえるか?
このように考え、相手が好きなものや興味・関心があるものを知るところから始めてみましょう。
「批判や非難をせずに、相手をほめる」ことで人の心は大きく動きます。
人は誰しも承認欲求を持っているので、自分のことを受け入れてくれる人に対して心を開いてくれるのです。
まずは、相手に興味を持ち、小さなことでもいいのでほめるところから始めてみてはいかがでしょうか?
6.感想、書評、学んだこと
本書はおよそ30にも及ぶ原則が記されており、それぞれ複数の実話を元に紹介されているのでかなりのボリュームです。
そのどれもが本質的な内容で、何か人間関係で悩んだ時に本書を見返すと気付きや学びを得られます。
現代では、インターネットやSNSの発展によって、文字やオンラインでのコミュニケーションが増えてきました。
その中で人と会話する機会が減少し、コミュニケーションに対して苦手意識を持っている方も多いのではないでしょうか。
私もオンラインでの仕事が増えてから人と関わる機会が減少し、以前より人と関係性を築くのが下手になったなと感じています。
そんなときに本書と出会い、改めて人間関係で大切なことを学びました。
特に、新型コロナウィルスの大流行でマスクをつける機会が増えた影響で、笑顔を作るのが下手になったと感じたので、「人に好かれる6原則」で出てきた“笑顔を忘れない”を元に積極的に笑顔で話すよう意識するようにしました。
結果、以前より人から好印象を持ってもらえるようになり、良好な人間関係を築くことができています。
真面目すぎて固い印象を持たれやすい私にとって、これは大きな進歩でした!
30もの原則が語られているため、人間関係で悩んだ時に本書を読み返すと解決のヒントをもらえるので、今後も私のバイブルとして大切にしていきたいなと思っています。
デジタル化が進んだ世の中だからこそ、人と人との繋がりをより大切にしていきたいものですね。
7.名言
人を動かすには、相手の欲しがっているものを与えるのが、唯一の方法である。
「相手が何を求めているのか?」を考えそれを提供する。
人間関係や仕事の中で活きてくる考え方だなと思いました。