仕事術・スキルアップ

『僕は君たちに武器を配りたい』(瀧本哲史)あらすじ・要約・感想まとめ

内容紹介

「本書は、これから社会に旅立つ、あるいは旅立ったばかりの若者が、非情で残酷な日本社会を生き抜くための、「ゲリラ戦」のすすめである。」

公務員は安泰、大手企業に勤めたら将来安心、医者は高給取り。

一昔前はよく言われていた常識は、今や当たり前ではなくなってしまいました。

高校を出て大学に入り必死に知識を身につけて専門家になれば一生安泰に過ごせる、そんなストーリーが日本だけでなく世界規模で崩れ去っています。

世界中がネットワークでつながり “本物の資本主義” が日本にも到来した今、どのように振る舞えば資本主義の波に飲まれず自分らしい人生を送ることができるのか。

自身が投資家であり、京都大学で医学部の学生に起業論を教える筆者は、これからの日本社会を生き抜くために「投資家的に生きる」ことを主張します。

日本社会を生き抜く武器は、自分の頭で考え判断する力、スペシャリティになるための心構え、投資家的な生き方。

これらを、自分自身の力で手に入れることが重要になるのです。

これからの時代は、今までと同じ戦い方では生き残ることができません。

現代の資本主義社会というゲリラ戦を戦い抜くための武器を手にしたい人におすすめの一冊です。

題名僕は君たちに武器を配りたい
著者瀧本哲史
出版社講談社
発行日2011/09/22
ページ数234ページ

こんな人にオススメ

・将来に不安がある方

・転職を考えている方

・これから社会に出る方

著者紹介

瀧本哲史

東京大学法学部を卒業。

東京大学大学院法学政治学研究科助手を経て、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。

独立後は会社を複数経営する傍らエンジェル投資家として活動。

京都大学客員准教授。教育、研究、産官学連携活動に従事。著書に『武器としての決断思考』(講談社)、『君に友だちはいらない』(講談社)、『読書は格闘技』(集英社)などがある。

『僕は君たちに武器を配りたい』要約

・本物の資本主義の到来

現代の高度に発達した資本主義社会では、勉強に励み身につけた専門的な知識やスキルももはや付加価値としての役割を果たしておらず、買い叩かれる運命にあります。

では、なぜ買い叩かれてしまうのか。

ポイントは「コモディティ」という概念です。

コモディティとは、経済学では「スペックが明確に定義できるもの」とされています。

牛丼チェーン店や車の部品、就職活動の際のTOEICの点数などは、数値や言葉ではっきりと定義できます。

それらは「ある一定以上」の基準を満たしていれば、そこにある差異は差異ではありません。

美味しくて安い牛丼であれば微妙な味の違いは重要ではなく、TOEIC 900点以上であれば何点でも同じと捉えられるのです。

もはや差異が差異でなくなったものは、価格を下げることでしか差別化できません。

それは物でも人でも同じです。

問題は、枠組みの中で争っていること、一定の基準がある、数値化できるもので差別化しようとしていることです。このことについて、著者は次のように語ります。

つまり、資格やTOEICの点数で自分を差別化しようとする限り、コモディティ化した人材になることは避けられず、最終的には「安いことが売り」の人材になるしかないのだ。

枠組みの中で争い、一定の基準や数値で差別化しようとすれば、安いことが売りのコモディティ化した人材になるしかないのです。

コモディティとなり買い叩かれることを避けるにはどうするべきか。

その答えが「スペシャリティ(他のものには替えられない唯一のもの)になること」です。

スペシャリティになるために必要なのは、これまでの枠組みの中で努力するのではなく、まず最初に資本主義の仕組みをよく理解して、どんな要素がコモディティとスペシャリティを分けるのか、それを熟知することだ。

・日本人で生き残る4つのタイプ、生き残れない2つのタイプ

資本主義の世界で稼ぐことのできるタイプは以下の6タイプがあります。

①商品を遠くに運んで売ることができる人(トレーダー)
②自分の専門性を高めて、高いスキルによって仕事をする人(エキスパート)
③商品に付加価値をつけて、市場に合わせて売ることができる人(マーケター)
④全く新しい仕組みをイノベーションできる人(イノベーター)
⑤自分が起業家となり、みんなをマネージ(管理)してリーダーとして行動する人(リーダー)
⑥投資家として市場に参加している人(インベスター=投資家)

このうちトレーダーとエキスパートは価値を失っていくと考えられています。

理由は以下です。

トレーダーは、商品を移動させることで利益を出してきたタイプです。

会社の商品を販売している多くの営業マンがここに分類されます。

「営業力はすべての商売の基本だ」という主張をする人もいますが、インターネットの普及は人々の購買行動に大きな影響を及ぼし、劇的に変化させました。

何かモノを買おうとする際、グーグルで検索すればその価格やスペックが瞬時に比較検討できるようになり、消費者はその中から一番安いものを選んで買えるようになったのです。

あらゆる企業の仕入れや見積もりでも同じことが起こっており、価格の透明化も進んでいることから、営業利益を上げるのが年々難しくなっています。

商品を移動させるトレーダー的な業務、つまり商社や広告代理店、旅行代理店という「代理」業務を行ってきた会社もビジネスモデルの構造転換を求められています。

エキスパートは、一つのジャンルに特化した専門家を指します。

エキスパートで生き残るのが難しい理由として、近年の産業構造の変化が激しく、時間をかけて積み上げてきた専門知識があっという間に過去のものになってしまうからです。

ある専門知識を身につけたところで、社会の変化に伴いニーズが消滅してしまえば、その知識の必要性すらなくなってしまうのです。

全産業がコモディティ化し、付加価値である差異が瞬く間に差異でなくなってしまう現代では、かつてのビジネスで重要視されていた「営業力」や「専門性」を追い求めてしまうと時代遅れに人にならざるを得ません。

重要なのは、残る4タイプのうち1つを目指すのではなく、一人のビジネスパーソンとして状況に応じて4つのタイプを使い分けることだと述べています。

・マーケターという働き方

マーケターとは、「顧客の需要を満たすことができる人」のことです。

既存の要素の組み合わせで差異を作り出し、新たな顧客獲得を可能にします。

マーケターに必要な能力は、時流を見極めて、状況の変化に合わせて新たなビジネスの場を作っていくことだ。

今の時代、企業や商品で差異を生み出すことは難しいです。

ターゲットが共感できるストーリーやブランドイメージを作り、差異を生み出すことが、新たな顧客獲得につながります。

ある分野でコモディティ化してしまった技術でも、全く異なる分野で応用すれば新しい価値を生み出す可能性があります。

資格や専門知識を持っているだけでは付加価値は生まれません。

自分で仕事を作ること、市場を作ること、たくさんの部下を管理すること、などというところに付加価値が生まれます。

自分自身も「商品」であり、売る場所や自分の持つ要素の組み合わせで付加価値を生み出すことができれば、全く異なる結果を手に入れることができるでしょう。

・イノベーター(起業家)を目指す

凋落している業界にこそイノベーションのチャンスは眠っています。

そのような業界のビジネス構造、ヒト・モノ・カネの流れ、効率化を妨げる原因などを徹底的に分析することで自分の唯一性を高め、スペシャリティへの道を開くことができます。

既存のものを、今までとは違う組み合わせ方で提示すること。それがイノベーションの本質だ。

イノベーター型の起業家に必要なのは特定分野の専門知識ではなく、いろいろな専門技術を知り、その組み合わせを考えられる人になることです。

・クレイジーなリーダー

リーダーには優秀でない人をマネージ(管理)するスキルが重要です。

非常に優秀な人は数少なく、世のほとんどの人が凡人です。

普通の人に高給を払わずともモチベーション高く仕事をしてもらえるように持っていくことが本当のマネジメント力といえます。

起業して事業を成功させるには尋常でないほどのパワーが必要です。

普通の人はそこまで大きなパワーを持っていません。

社会に革命を起こしたリーダーの多くは人格破綻者や自己愛の塊であったり、自分自身の過去に大きなコンプレックスを持っていたりします。

これがパワーの源となるのです。

反対に、自分はそこまでクレイジーではないが組織を運営したいと考える方も多いでしょう。

組織はリーダーだけでは成り立ちません。

リーダーのサポート役に回ることでも十分成功のチャンスは掴めます。

・投資家として生きる

投資家的に生きるうえで必要なのが、「リスク」と「リターン」をきちんと把握することである。

投資家は、ただリスクを回避することよりも、リスクを見込んでも投資機会を増やすことを重視しています。

失敗を恐れて確実に成功するものだけに投資することは、結果的に自分が得られたかもしれない大きな利益を手放すことになるからです。

つまり投資家として生きるならば、人生のあらゆる局面において、「ローリスク・ローリターン」の選択肢を選んで安全策をとるより、「ハイリスク・ハイリターン」の投資機会をなるべくたくさん持つことが重要になる。

また、筆者は「メディアの情報をそのまま信用するな」とも伝えています。

投資家的に生きるために絶対に必要なのは、報道されるニュースの裏を読み、「真実」に気付く力です。

新聞やテレビには、基本的に誰かが「アナウンスしてほしい情報」だけが載っています。

真に価値のある情報は、みんなが知った瞬間に価値を失ってしまいます。

影響力のある人間が、世間を自らの望む方向に誘導するために流した情報がメディアに載っているのです。

メディアの情報をそのまま信じて行動すれば、誰かの望むように踊らされ、損してしまいます。

もっとも大切なのは、人々と違うインプットを得ること、みんなの知らない情報を得ることです。

人間の行動(アウトプット)は、インプットの結果です。

自分の知識、労働力、人脈を投資して人々と違う情報を獲得し、それをもとにして行動をすることが投資家的に生きるための力になります。

「投資」とは、お金を投資することだと一般的に思われているが、本質的な「投資」とは、自分の労働力や時間、人間関係を投資することでもあるのだ。

・自分の頭で考える

投資家的に働くこととサラリーマン的に働くことの違いは何でしょうか。

サラリーマンは「1時間働いたらいくら」「何時間働いたらいくら」と時間単位で計算される体系で雇われていることがほとんどです。

そのため手を抜くこともできればわざと残業することも可能です。

投資家的に働くとは、時間給ではなく、自分の投資した時間と労働力に対してできるだけ多くのリターンを得られるように働くことです。

自分の投資と報酬が連動することで、どのようにすれば売り上げを上げられるのか自分の頭で考えられるようになります。

投資家として生きるには、自分で調べるひと手間を惜しまず、あらゆる情報を鵜呑みにせずに考えて結論を出すことが必要です。

投資家的に考える習慣というのは、実際に自分の手足を使って、行動をしてみることで身に付くスキルなのである。

本書の終盤、筆者は「リベラル・アーツ」の重要性について述べています。

日本の大学では1〜2年の教養過程で学ぶものですが、リベラル・アーツこそ人間が自由になるための学問であるとしています。

リベラル・アーツでは人類の歴史や哲学、芸術や文学、自然科学全般について学びます。

リベラル・アーツが人間を自由にするための学問であるならば、その逆に、本書で述べた「英語・IT・会計知識」の勉強というのは、はあくまで「人に使われるための知識」であり、きつい言葉でいえば、「奴隷の学問」なのである。

リベラル・アーツで学ぶ基礎的な素養(教養)は、投資家として生きること、資本主義の仕組みを理解して物事を判断することに、非常に重要なのです。

実践ポイント

この本に興味を持つ人は、現実に何らかの不安を感じていることが多いでしょう。

新聞やテレビには誰かが「アナウンスしてほしい情報」しか載っていません。

試されるのは「ニュースの裏を読む力」で、この力は一朝一夕で手にすることができるものではありません。

投資家的に考える習慣を身につける第一歩は、情報を鵜呑みにせず自分で調べることです。

例えば、新型コロナウイルスに関してさまざまな報道がされていますが、疑問をそのままにせずまず厚労省に電話をして聞いてみる。

これだけでも立派に自分から情報を掴みにいったことになります。

報道に左右されず、然るべき機関や人に情報を求めることを心掛けてみましょう。

感想・書評・学んだこと

専門性を高めれば将来安泰である、私もかつてはそう思っていました。

大学で専門知識を詰め込み、専門職として勤務して数年、気付きました。

「この知識、他のところで全く活かせないではないか。」

資本主義が進み仕事が細分化され、それに伴い専門性がどんどん高まり、同じ分野でも隣の畑のことは全くわからない。

他と差別化するにはより専門性を高めるしかない。

そんな終わりのない戦いが続いていくように思えました。

まさにコモディティ化した人材になっていたのです。

本文でリベラル・アーツの重要性が説かれていましたが、専門知識を詰め込むこと自体が奴隷への道を歩むことなのではなく、詰め込んだ専門知識に固執してしまうことが自分をコモディティ化させるのだと感じました。

教養を学び、投資家的な考え方を身につけ、スペシャリティになること。

押し寄せる本物の資本主義の波に立ち向かい、ゲリラ戦を生き抜く力を鍛えたいものです。

最高の名言

社会に出てから本当に意味を持つのは、インターネットにも紙の本にも書いていない、自らが動いて夢中になりながら手に入れた知識だけだ。自分の力でやったことだけが、本物の自分の武器になるのである。資本主義社会を生きていくための武器とは、勉強して手に入れられるものではなく、現実の世界の難しい課題を解決したり、ライバルといった「敵」を倒していくことで、初めて手に入るものなのだ。

学校で教育されたことが武器になるのではありません。武器は自分自身で手に入れるものなのです。

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