1.内容紹介
今や世の中は大副業時代に突入しました。本著が出版される前年2019年には「老後2000万円問題」や「働き方改革」などが話題になりました。
さらにコロナの影響で仕事を失う人が増加。終身雇用制度が崩壊し、国や企業が個人を守るのが難しい時代に突入しています。
そんな中、副業に取り組む人が急速に増えています。これを読んでいる方も新しく副業を始めようと考えているのではないでしょうか。
著者の俣野成敏氏はサラリーマンをしながら副業に取り組み、現在は独立してビジネスオーナーや投資家として働いています。
「新しく副業を始めたいけど、何からすれば良いかわからない。」
「どのように副業に取り組んだら良いのだろう。」
ギグワーク(単発・短期の仕事)やアルバイトの掛け持ちで消耗しているあなたに送る、これからの時代を生きる道しるべとなる本です。
書籍タイトル | 『サラリーマンを「副業」にしよう』 |
著者 | 俣野成敏 |
出版年月日 | 2020/06/27 |
出版社 | プレジデント社 |
ページ数 | 287ページ |
2.こんな人にオススメ
・給料が上がらず将来に不安を抱えている方
・どういった副業に取り組んで良いのか分からない方
・サラリーマンをしながら副業をすることに壁を感じている方
3.著者紹介
俣野成敏
1971年1月に福岡県で誕生。
30歳の時にリストラに遭遇。同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起し、年商14億円の企業に育てる。
33歳、東証一部上場グループ約130社の中で現役最年少の役員に抜擢され、40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。
独立後は、フランチャイズ2業態6店舗のビジネスオーナーや投資家としても活動。投資にはマネーリテラシーの向上が不可欠と感じ、その啓蒙活動にも尽力している。
近著では『トップ1%の人だけが知っている』(日本経済新聞出版社)のシリーズが12万部を突破。自著と共著を交えた異なる3分野でベストセラーシリーズを放ち、著作累計は47万部に。
ビジネス誌の掲載実績多数。『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも多数寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』を4年連続で受賞している。
2020年より、サラリーマン以外の本業をつくるための副業オンラインアカデミー『The Second Phase(TSP)』を創設。数多くのサラリーマンが集っている。
4.『サラリーマンを「副業」にしよう』要約
1章:間違いだらけのサラリーマンの“副業”
1章はサラリーマンという働き方や現代社会の仕組みに関する話から始まります。「高度経済成長期」が終わった今、サラリーマンの終身雇用制度は崩壊し、働き方改革が推進されるようになりました。
しかし会社員の賃金は上がらず、働き方改革により残業で稼ぐことも難しくなっています。国や会社が個人を守るのが難しい時代に突入しているのは明白です。
著者は以下のように語ります。
とどのつまり、働き方改革の本質とは、自己責任の推進です。
今後自分の身を守るためにはサラリーマン以外の収入源が必要になります。その方法のひとつが“副業”というわけです。
ただ隙間時間を使ってできるアルバイトやギグワーク、情報商材を使った副業(FXやせどり、ポイント稼ぎなど)では短期間で稼げたとしても長くは続きません。なぜなら他者と差別化しづらいからです。
そこで著者は個人事業主(自営業者)をおすすめしています。ここでいう個人事業主とは「自分の事業を持ち、それで他者と商売をしていること」と定義されています。おすすめの理由は以下の通りです。
1.他人との差別化が図りやすい
→自分の事業を立ち上げ育てていく中で他と差別化できれば、「あなたから買いたい。」と言ってもらえるようになる。
2.「損益通算」が可能である
→損益通算とは給与をもらっている人が事業をおこなって、損失が出た際に給料から損失分を差し引くことができる制度のこと。これによって例えば個人事業の方で赤字になったとしても、確定申告で還付される(税金が返ってくる)。
3.自分で引退時期を決められる
→個人事業に定年はないので、自分が好きなタイミングで引退できる。
1章の終わりでは副業から複業(本業が複数ある状態)にし、2つ目、3つ目の本業を作ることの大切さを伝えています。
2章:副業のスタイルを考える
1章で副業に関する認識が深まったところで、2章では「どの副業を選択すれば良いのか?」という疑問に答えてくれます。その中で登場するのがジョブマトリクスです。
ジョブマトリクスとはビジネスに不可欠な仕事の領域を4つに分類したもので、
1.Specialist
2.Sales
3.Supervisor
4.Supporter
で構成されています。副業としておすすめなのは“Sales(セールス)”と“Supporter”であり、著者が特に推しているのがセールスです。
その理由は下記の通りです。
・特別な才能がいらない
・売れるようになることで、目の前のキャッシュが増える
・いいビジネスパートナーを見つけやすくなる
・どんな商材も扱えるようになり、時流の変化にも対応できる
・毎日が楽しくなる
この他にも視野が広がることで、自分の才能に気付きやすくなることがメリットです。セールスでは顧客の希望や未来像を考える必要があるため、自然と物事を客観視できるようになります。
特に先天的な才能を必要とせず、特別なコネや人脈がなくても自分の腕1本で生きていける。これがセールスを副業にすべき最大の理由なのです。
ビジネスでは自分の商品やサービスが売れなければ収入を得ることができません。「顧客が何を求めているのか?」を考えて必要なものを届ける力、これがセールスです。
3章:副業が売れる仕組みを作る
3章では実際にセールスを副業にする方法について語られています。
ここでは著者の実体験を元に
・収入を一ヶ所に頼ることは危険
・いい商品だけあっても売れなければ意味がない
と伝えています。
副業初心者であればまず他人の商品やサービスを販売するか、業務委託を受けるビジネスから始めてみると良いでしょう。
ただその前に大切なのが、「自分の欲と恐怖」について知ることです。
なぜかというと人が動く理由は、
・欲に近づくための行動
・恐怖から逃れるための行動
のどちらかに集約されるからです。
自分の欲と恐怖に正面から向き合う機会を作りましょう。この取り組みによって、お客さまの立場で物事を考えることもできるようになります。
またセールスの基本は「人間関係」です。相手の共感を呼ぶためには、相手を深く理解することが大切です。なので自分の欲と恐怖の掘り下げが、相手のことを知るプロセスになります。
そしてペルソナ設定(どんな人に商品を届けたいのか?)を考えたら実際にセールスへと進んでいきます。どうすれば「売れる仕組み」を作ることができるのでしょうか?
ここでは「セールスの3ステップ」が紹介されています。
【セールスの3ステップ】
ステップ1:見込み客リストを作る
→見込み客とはあなたがアプローチできる人の中で、新たなお客さまになる可能性がある人。リストは常に見返して更新する。
ステップ2:試食(情報)を準備し、提供する
→お客さまとの関係性を築いていく段階。最初は無料か無料に近い情報を提供し、提案と貢献を繰り返しながら信用を積み重ねていく。提供後は必ず相手のリアクションを見て、本当に求めているものなのかを確認する。
ステップ3:オファー、アクションを起こす
→売り込みは一切せずに、相手が欲しい気持ちを見せてきたら見込み客リスト→顧客リストへと昇進させる。そして購入に繋げていく。
この3ステップがセールスにおいて重要な段階ですが、中には上手く成果が出ない人もいます。ここで著者はセールスで稼げない人の特徴を3つにわけて紹介しています。
【セールスで稼げない人の3つの共通点】
1.セールスの基本がわかっていない
→いきなり商品を売ろうとする人が多い。信頼関係を築いて相手に選ばれる自分になるよう、まずは貢献に徹する。
2.顧客が見えていない
→相手が本当にお客さまになる人かどうかわかっていない。
3.商品に確信がない
→自分の商品のことを熟知し、確信を持つことが大事。商品への確信がないと相手に不安が伝わってしまい、結果的に売れなくなる。
現在コロナ禍で直接人と関わる機会が減り、オンラインでのセールスが主流となってきました。しかしオンライン化したからといってやることは変わらないので、臆せずセールスの3ステップを意識していきましょう。
4章:副業を維持・発展させる
4章では「マーケティング」の必要性や重要性について解説されています。
セールスとマーケティングは似て非なるもの。セールスが「狩猟」ならばマーケティングは「農耕」です。つまりセールスは即効性があり結果が早く出やすいですが、マーケティングは結果が出るまでに時間がかかります。
最初はセールスから始めてビジネス経験を積みながら、ビジネスを継続させる仕組み作りとしてマーケティングを活用していきましょう。
実際にマーケティングを活用するためには、以下の3ステップが重要です。
【マーケティングの3ステップ】
ステップ1.メディアを作る
→「ペルソナ」「コンセプト」「語る資格」「媒体選択」の4つをもとに作り上げる。
ステップ2.メディアを育てる
→自分の手でコツコツとメディアを育てていく。
ステップ3.マネタイズ(収益化)する
→最初から商品を作るのは大変なので、まずは他人の商品を売るところから始める。
第5章:独立も視野に入れる
5章では実際に個人事業主として独立する際の準備や心構えについて述べられています。
最初の準備として、開業届を出すことに加えて以下の3つがあります。
1.名刺を作る
→個人事業主は自分のブランドを築いていく身なので、名刺を作って自分をアピールするのが大事。
2.請求書を作る
→お金を受け取れるようにするため。サラリーマンはお金を受け取ることへの抵抗感が強いので、克服する意味でも請求書プラットフォームを作っておくと良い。
3.メニュー表を作る
→自分が提供するサービスの価格帯を決める。スタンダード商品(自分が売りたい商品)を軸に価格帯が高い商品、低い商品を並行して作っていく。
これらを「副業を始める」と決めた段階から作りましょう。
しかしいざ副業を始めたとしても、成長が早い人と遅い人に分かれます。この違いは「フィードバックを受けているかどうか?」です。
『こちらが取ったアクションに対してどうだったのか、という意見をもらうことで、次の行動に活かします。「アクション→フィードバック→リプライ」という、この繰り返しが、成長を促進させるのです。』
そしてフィードバックをもらうべき相手として、
・すでにそれを達成した経験者からのもの
・顧客や見込み客からのフィードバック
を挙げています。経験者のアドバイスや関わるお客さまの声、反応から学びを得て、スピード感を持って改善することが大事です。
これによって早く成長できるかどうかが決まります。
5.実践ポイント
実際に副業を始めようと思っても何から始めればいいかわからない、どの副業が適しているのかわからない、といった悩みが出てくると思います。
アルバイトやギグワークを通して短期的に稼ぐことができたとしても、サラリーマンをしながらだと心身ともに消耗してしまいますし、その結果楽して稼ぎたい気持ちが出てきて「簡単な作業で月20万円稼げる」のような怪しい案件につい引っかかってしまう人も多いです。
なのでまずはセールスとマーケティングを学ぶところから始めましょう。なぜかというと、どんなに良い商品やサービスを作ることができたとしても売れなければ意味がないからです。
「今世の中では何が求められているのか?」そして「どのようにお客さまの元に届ければ良いのか?」が分かっていないとビジネスは上手くいきません。
副業初心者であればなおさら売上を立てるのが難しいので、まずは他人のものを販売するか、業務委託を受けるビジネスから取り組んでみることをおすすめします。
6.感想、書評、学んだこと
以前は怪しいイメージがあった副業も、今や人々の中で当たり前の存在になりつつあります。しかしその分「楽して稼ぎたい。」という心の弱みに漬け込んで、情報商材の販売やネットワークビジネスの勧誘をする人が増えてきました。
私自身も過去にネットワークビジネスの勧誘を受け、どんどんのめり込んで借金が膨らんでいった経験をしています。もちろん違法のビジネスではないですが、世間のイメージの悪さから周囲の友達が離れていき、関係が途絶えてしまった人も少なくありません。
それほど「どの副業を選ぶか?」は重要なのです。
副業についてあまり知識がないうちは情報を持っている人に騙されやすいので、まずは世の中にはどんな副業があるのかを知ることが大切です。
私自身もネットワークビジネスをしていたときは視野が狭くなっており、「自分にはこれしかない。」と思い込んでいました。
しかし視野を広げてみると世の中にはたくさんの働き方があり、自分の可能性が広がったことを今でも覚えています。
視野が広がるきっかけは様々ですが、本書もその一つとなり得るのです。
収入を一ヶ所に絞ることは危険なので、今のうちから自分に合う働き方を探してみませんか?
7.名言
本来、コミュニケーションの本質とは、相手に興味・関心を持つことです。事実、人は自分に興味を持ってくれた人に対して、興味を向けるものではないでしょうか。セールス・マーケティングの根底にも、まったく同じ考え方が流れています。マーケティングとは、自分が貢献できる相手を見つける作業のことであり、セールスとは、実際に目の前の相手に貢献することに他なりません。
第5章の最後に出てくる言葉です。
ビジネスは商品やサービスの提供以前に人と人との関わり。良い関係を築いて「どうすれば相手に貢献できるか?」を考え抜いていきましょう。