マインド・自己啓発

『生き方 人間として一番大切なこと』(稲盛和夫)あらすじ・要約・感想まとめ

内容紹介

「私には才能は不足していたかもしれないが、人間として正しいことを追求するという、単純な、しかし力強い指針があったということです。」

日本で初めてコンピューター等の電子部品に使われるファインセラミックス材料の合成、開発に成功。

その後、誰もが「不可能」と断じた日本航空(JAL)の再建に成功し「経営の神様」とも名高い稲盛和夫氏。

数々の功績の裏には「人として大切なこと」を根本の指針とし、生きる上での「原理原則」を貫いた姿がありました。

本書では稲盛氏自身の経験を元に、豊かで幸せに生きるヒントが記されています。

豊かで幸せに生きることに繋がる「原理原則」。

それはいつの時代も不変のものです。

移り変わりが激しい現代だからこそ、根本に立ち返り「原理原則」を知ること。

それを再認識することで、自ずと未来も明るいものになっていくのではないでしょうか。

題名生き方 人間として一番大切なこと
著者稲盛和夫
出版社サンマーク出版
発行日2004年8月10日
ページ数246ページ

こんな人にオススメ

・将来が不安な方

・豊かで幸せな生き方をしたい方

・起業、何か新しいことを始めたい方

著者紹介

稲盛和夫

1932年鹿児島県で生まれる。鹿児島大学工学部卒業。

1959年、27歳で京都セラミック株式会社(現・京セラ)を設立。社長、会長、名誉会長を歴任。1984年には第二電電(現・KDDI)を設立し会長に就任。同年稲盛財団を設立。科学、技術、思想、芸術の分野で大きく貢献した人に送られる、日本初の国際賞である「京都賞」を創設した。

経営塾「盛和塾」の塾長も務め、若手経営者の育成に力を注ぐ。

主な著書に「稲盛和夫の哲学」「君の思いは必ず実現する」「心。」「稲盛和夫の実学」などがある。

『生き方 人間として一番大切なこと』要約

・幸せに生きるための原理原則

生き方には原理原則があるといいます。

それは誰もが小さな頃に教えられたような、「嘘をついてはいけない」「人に迷惑をかけてはいけない」「正直であること」「欲張ってはいけない」「自分のことばかり考えてはいけない」などです。

すなわち大人になると忘れてしまいがちで、いたってシンプルな「人として良いこと」とされることです。

稲盛氏は27歳で京セラを創設します。この時、技術者出身の稲盛氏は経営に関しては未経験だったため、これらのシンプルな「原理原則」をそのまま経営の指針とします。

稲盛氏は以下のように語ります。

京セラは、私が二七歳のときに周囲の方々に作っていただいた会社ですが、私は経営の素人で、その知識も経験もないため、どうすれば経営というものがうまくいくのか、皆目見当がつきませんでした。困り果てた私は、とにかく人間として正しいことを正しいままに貫いていこうと心に決めました。

経営について無知だったということもありますが、一般に広く浸透しているモラルや道徳に反することをして、うまくいくことが一つもあるはずがないという、これまた単純な確信があったからです。

それは、とてもシンプルな基準でしたが、それゆえ筋の通った原理であり、それに沿って経営をしていくことで迷いなく正しい道を歩むことができ、事業を成功へと導くことができたのです。

今日、日本を代表する企業に成長した京セラは、ベンチャー企業から始まりました。

創業したばかりの頃、稲盛氏にとって経営は未知の領域でした。

だからこそ「人としてよいことをする」という実にシンプルな「原理原則」を「正しく貫く」。

それこそが、未経験のことでも大きな成功を収めた要因だとしています。

・成功に必要なもの

稲盛氏自身、経営に関して才能や能力がもともと高かったために成功を収めた側面もあるかもしれません。

しかし以下のように語ります。

世間には高い能力をもちながら、心がともわないために道を誤る人が少なくありません。私が身を置く経営の世界にあっても、自分さえ儲かればいいという自己中心の考えから、不祥事を起こす人がいます。

才覚が人並みはずれたものであればあるほど、それを正しい方向に導く羅針盤が必要になります。その指針となるものが、理念や思想であり、また哲学なのです。

いくら才能や能力があっても、この「哲学」が不足し、「人格」が未熟であれば正しい方向に進むことができず、道を誤ってしまいます。

これは経営者や各分野のリーダーに限らず、私たちの人生にも共通していることだと著者はいいます。

では人格とはどのようなものでしょうか。

・人格とは性格+哲学

人格は「性格+哲学」という式で表されるといいます。

人間が生まれながらに持っている性格と、その後の人生を歩む過程で学び身につけていく哲学の両方から、人格というものは成り立っている。つまり、性格という先天性のものに哲学という後天性のものをつけ加えていくことにより、私たちの人格ー心魂の品格ーは陶冶されていくわけです。

では、どのような哲学が必要なのかといえば、それは「人間として正しいかどうか」ということ。親から子へと語り継がれてきたようなシンプルでプリミティブな教え、人類が古来培ってきた論理、道徳ということになるでしょう。

人間として間違っていないか、根本の倫理や道徳に反していないかー私はこのことを生きるうえでもっとも大切なことだと肝に銘じ、人生を通じて必死に守ろうと努めてきたのです。

性格に加え、生きる上で学び身につけていく「人として正しいかどうか」という「論理、道徳」の哲学を持ち日々生きることで、人格が磨かれます。

それにより良き方向に才能、能力を使うことができ、成功へと歩んでいけるのです。

では、具体的に人格を磨くにはどのようにすればいいのでしょうか。

・働くことで人格が高められる 働くことは生きること

稲盛氏は、人格を高める方法として「日々懸命に働くこと」が何より大事だとします。

お釈迦さまは、悟りの境地に達する修行法の一つとして、「精進」することの大切さを説いています。精進とは、一生懸命働くこと、目前の仕事に脇目もふらず打ち込むことです。私は、それが私たちの心を高め、人格を練磨するためにもっとも大事で、一番有効な方法であると考えます。

一般的に、「働くことは生活の糧を得るための手段であり、なるべく労働時間は短い方がいい。」「そのぶん余暇や趣味に生きることこそ豊かな人生だ」と考え、労働を必要悪と捉えられがちです。

しかし稲盛氏は

働くということは人間にとって、もっと深淵かつ崇高で、大きな価値と意味を持った行為です。労働には、欲望に打ち勝ち、心を磨き、人間性をつくっていくという効果がある。単に生きる糧を得るという目的だけでなく、そのような副次的な機能があるのです。

といいます。

またラテン語に、「仕事の完成よりも、仕事をする人の完成」という言葉があります。人格の完成もまた仕事を通じてなされるもので、哲学は懸命の汗から生じ、心は日々の労働の中で練磨されるといいます。

自分がなすべき仕事に没頭し、工夫をこらし、努力を重ねていく。それは与えられた今日という一日、今という一瞬を大切に生きることにつながります。

と稲盛氏はいいます。

また、

一度きりの人生をムダにすることなく、「ど」がつくほど真摯に、真剣に生き抜いていくーそのような愚直なまでの行き様を継続することは、平凡な人間をもやがては非凡な人物へと変貌させるのです。世の「名人」と呼ばれる、それぞれの分野の頂点を極めた達人たちも、おそらくそのような道程をたどったにちがいありません。

労働とは、経済的価値を生み出すのみならず、まさに人間としての価値をも高めてくれるものであるといっていいでしょう

といいます。

幸せに生きること、人生をよりよく生きるには「能力、才能」だけでなく、「性格や哲学」を合わせた人格が大切であるとされますが、哲学を知識だけに留めず実践して身につけることでより人格を高めることができます。

哲学を身につけるためにも、労働は一番有効な手段であるとします。

・幸福を得る方程式 考え方×熱意×能力

人生をよりよく生き、幸福という果実を得るには、どのようにすればよいか。そのことを私は一つの方程式で表現しています。それは、次のようなものです。

人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力

つまり、人生や仕事の成果は、これら三つの要素の“掛け算”によって得られるものであり、けっして“足し算”ではないのです。

と稲盛氏はいいます。

考え方とは先に挙げてきたような、哲学、理念、理想、心の在り方を指します。

熱意は事を成そうとする情熱や努力する心です。

能力とは先天的な要素を指し、才能、知能、健康、運動神経などです。

稲盛氏は、掛け算なので、能力があっても情熱やそれにかける思いが弱ければ、いい結果は出ないといいます。

逆に、能力がなくとも、熱意や情熱があれば、先天的に能力や才能がある人よりもはるかに良い結果を得られることがあるとします。

この掛け算の中で特に重要なのが「考え方」だと稲盛氏はいいます。

なぜなら考え方がマイナスで始まったことはマイナスの方向へ行き、プラスで始まったことはプラスの方向へいくためです。

したがって、能力、才能、熱意に恵まれながらも考え方がマイナスだと、ネガティブな成果を招いてしまい、いくら掛け算してもマイナスにしかならないのです。

稲盛氏は、大学卒業後、就職難時代のためなかなか就職が決まらず「弱いものがわりを食う世の中なら、いっそ義理人情の厚いやくざの世界に飛び込もうか」と考えたこともあったそうです。

しかし、

そのとき、ほんとうにその道を選んでいたら、そこそこ出世をして、小さな組の親分くらいにはなっていたかもしれません。しかし、そんな世界でいくら力をつけても、根本となる考え方がゆがんでいるのですから、けっして幸せにもなれなかったでしょうし、恵まれた人生を歩むことはできなかったでしょう。

といいます。

常に前向きで建設的であること。感謝の心をもち、みんなといっしょに歩もうという協調性を有していること。明るく肯定的であること。努力を惜しまないこと。足るを知り、利己的でなく、強欲ではないこと

能力や才能、熱意に加え、プラスな考えを持つこと。

これこそが幸福を得る鍵だと稲盛氏はいいます。

・宇宙の法則 心に描いたものが実現する

稲盛氏は「宇宙には全てをよくしていこう、進化発展させていこうという力の流れが存在する」といいます。

この流れにうまく乗ることで、人生に成功と繁栄をもたらすことができます。しかし、流れから外れてしまうと没落や衰退が待っているとします。

このことについて、稲盛氏は以下のように語ります。

よいこころがけを忘れず、もてる能力を発揮し、常に情熱を傾けていく。それが人生に大きな果実をもたらす秘訣であり、人生を成功に導く王道なのです。なぜなら、それは宇宙の法則に沿った生き方であるからです。

よい思いを描く人にはよい人生が開けてくる。悪い思いをもっていれば人生はうまくいかなくなる。そのような法則がこの宇宙には働いているのです。

人生は心に描いたとおりになる、強く思ったことが現象となって現れてくるーまずはこの「宇宙の法則」をしっかりと心に刻みつけてほしいのです。人によっては、このような話をオカルトの類と断じて受け入れないかもしれません。しかし、これは私がこれまでの人生で数々の体験から確信するに至った絶対法則なのです。

よい心とは「世のため、人のため」という思いを指します。

またこれこそが「宇宙が本来持っている意思である」と考えられるといいます。

この宇宙の流れに沿った生き方こそ、「人として正しい生き方」をすることであり、私たちひとりひとりの成功とともに、人類に平和と幸福をもたらす王道なのだと稲盛氏は語ります。

実践ポイント

・何かを選択する時は、「人として正しいこと」を念頭に選択する

人生は常に選択の連続ですが、どのような場合でも常に「人として正しいこと」「人として良いこと」を選択することが良い結果を生むとします。

稲盛氏は「人として正しいこと」を選択した結果、それが自分にとってマイナスと思えるようなことでも、大きく長い目で見れば必ずプラスとなって返ってくるのだといいます。

・どのような状況でも常に前向きに考える

プラスのことからはプラスが生まれますが、マイナスなことからはマイナスなことしか生まれません。

そのためできる限り、常に前向きに、「必ず良い方向にいく」と考えることが大切です。

感想・書評・学んだこと

先の見えない漠然とした不安や焦り、何か特別な才能、能力がないと生きていけないのではないかという思い込みを打ち消してくれた一冊です。

つい忘れてしまいがちな、根本的な考えを忠実に守ること。「人として正しいこと」を正しく貫き通すこと。それこそが全てのものが幸せに繁栄できる近道であり真理なのだと本書を読んで感じました。

しかしこのシンプルな原理原則を「正しく」守り抜くことはなかなかできることではないとも感じます。なかなかできることではなくても、できるように少しでも努力していきたいと感じました。

最高の名言

私たちはいま、混迷を極め、先行きの見えない「不安の時代」を生きています。

豊かなはずなのに心は満たされず、衣食足りているはずなのに礼節に乏しく、自由なはずなのにどこか閉塞感がある。やる気さえあれば、どんなものでも手に入り何でもできるのに、無気力で悲観的になり、なかには犯罪や不祥事に手を染めてしまう人もいます。

そのような閉塞的な状況が社会を覆いつくしているのはなぜでしょうか。

それは、多くの人が生きる意味や価値を見いだせず、人生の指針を見失ってしまっているからではないでしょうか。今日の社会の混乱が、そうした人生観の欠如に起因するように思えるのは、私だけではないと思います。

そういう時代にもっとも必要なのは、「人間は何のために生きるのか」という根本的な問いではないかと思います。

まず、そのことに真正面から向かい合い、生きる指針としての「哲学」を確立することが必要なのです。

「なぜ生きるのか」という問いには答えがないので、考えても仕方のないことだと思っていました。しかしたとえ正解がなかったとしても、自身の中でプラスとなるような、良い方向に進めるような軸となる哲学、思想を持つことが大切だと感じました。

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