内容紹介
オリジナルな人は誰よりも独創的で、特別な才能や能力を持ち、リスクテイカーで、リーダーシップのある人。
そんなイメージを打ち砕き、誰もが独創的でオリジナリティ溢れる人になれる可能性を感じられる一冊です。
著名な作家や芸術家でも、傑作とされるのは何百という作品の中の限られた数だけであること。つまり、ほとんどの行動は日の目を見ることはありません。またリスクテイカーのように思われる起業家も、実は自己不信や恐れと戦っています。
この本では、いかにリスクを減らしながら自分のビジョンを成し遂げるかが書かれています。
一見特別に感じるような人々も、一般的な人と変わらない性質を持っていることが、科学的根拠を用いて説明されています。
失敗を恐れ前に進めない時、不安や恐怖を抱えた時、弱みを強みに変えたい時。
本書を開けば「大丈夫。」と安心感を得られるヒントが数多く盛り込まれています。
題名 | ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代 |
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著者 | アダム・グラント |
出版社 | 三笠書房 |
発行日 | 2016年6月22日 |
ページ数 | 375ページ |
言語 | 日本語(原題:英語「Originals HOW NON-CONFORMISTS MOVE THE WORLD」) |
こんな人にオススメ
・起業に挑戦したい方
・新しいことにチャレンジしたい方
・自分のオリジナリティを大切にして生きていきたい方
著者紹介
著者名アダム・グラント
アメリカ合衆国の心理学者。専門は組織心理学。ペンシルベニア大学ウォートンスクール教授。2015年、世界経済フォーラムのヤング・グローバル・リーダーズに選出。また最も影響力のあるグローバル経営思想家として「Thinkers50」にも選出された。2016年度、その年の影響力のあるリーダーとしてフォーチュン誌の「40Under40」にも選出。著書に「GIVE&TAKE 与える人こそ成功する時代」がある。
『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』要約
・『オリジナル』とは?
オリジナルと聞くと、何か特別な物事や、才能、能力をイメージされがちです。
しかし著者は「オリジナリティの最たるポイントは、既存のものを疑い、よりよい選択肢を探すことだ。」と言います。
私のいうオリジナリティとは、ある特定の分野において、その分野の改善に役立つアイデアを導入し、発展されることを意味する。
オリジナリティとは、既存のものをより良いものに変えて発展させていくことなのです。
そして「オリジナルな人」とは、「自らのビジョンを率先して実現させていく人」とします。
・『ブ・ジャ・デ』という発想の転換
既存のものにまずは疑問を持つことが、オリジナリティを発揮する上で重要になります。
そのため、現状に対して「なぜ、どうして」という「好奇心」を持つことが必要です。
そこで著者は初めての経験にも関わらず「この体験、前もしたことがあるような気がする…」といった「デ・ジャ・ブ」の反対の、既知のものに対して新たな視点を向ける「ブ・ジャ・デ」の体験を提唱します。
現状に対して「なぜ」という疑問を持つことが、新たな視点を得るためのヒントです。
・あえて『リスク』を取らない選択をする
オリジナルな人は挑戦することを好み、リスクを取ることを厭わないように考えられがちです。しかし、彼らはむしろ慎重で、あえてリスクを減らす傾向にあるとします。
新しい事業を始める時、現在のキャリアを継続しながら起業した起業家は、キャリアを完全に中断し新しい事業のみに専念した起業家に比べて事業に失敗する確率が33%も低かったというデータが紹介されています。
これは芸術方面にも言えることで、世界的に成功を収めたロックバンド「クイーン」のギタリストブライアン・メイはバンド活動する傍ら、しばらく天体物理学の博士号課程で学業を続けていました。
ホラー小説の巨匠スティーブン・キングは1作目を執筆したのちも7年間ガソリンスタンドの店員や教師をしていました。
著者はこのことに対して
ある分野で危険な行動をとろうとするのなら、別の分野では慎重に行動することによって全体的なリスクのレベルを弱めようとするのだ。
と言います。
ある分野で安心感を得られると、別の分野でオリジナリティを発揮する自由が生まれると言います。
成功を収めるオリジナルな人は、ある分野で大きなリスクを冒しつつ、別の分野ではことさら慎重になることでバランスをとっているのだ。
と何十年に渡り世界中の優れた起業家を育成した経験を持つエンデバー社CEOのリンダ・ロッテンバーグは述べています。
・チャンスを最大化するタイミング
オリジナルであるということは、1番になることや先発者であるということではなく、他と異なり、他よりも優れていることだと著者は述べます。
マーケティング研究者ピーター・ゴールダーとジェラルド・テリスは「先発企業」と「後発企業」の状況を比較し研究を行いました。
そこで失敗の確率に圧倒的な違いを見つけ出します。
なんと「先発企業」の失敗率は47%、「後発企業」は8%でした。
市場占有率でも、長く続いた場合「先発企業」は平均10%、「後発企業」は28%だったのです。
「先発企業」の失敗率が高かった要因には、一番になることにとらわれて、衝動的な決断をしがちな面が挙げられます。
早い決断や他者よりも早く始めたことが成功に繋がるとは限らないのです。
アイデアに対しよく熟考することや、物事を始めるタイミングを見極めることの重要性が示されています。
・オリジナルなアイデアはどう生まれる?
オリジナルなアイデアを生み出す方法は、「より多くのアイデアを生み出すこと」です。
大量に創作すると、オリジナリティの高い作品が生まれる可能性が高くなります。
歴史に名を残すような有名な作曲家、芸術家であっても同様です。
一握りの傑作を生み出すまでに、生涯の間でモーツアルトは600曲、ベートーベンは650曲、バッハは1000曲作曲していました。
「ゲルニカ」を描き上げたピカソも生涯に1800以上の絵画、1200以上の彫刻、2800以上の陶芸と数多くの作品を残していますが、高く評価されたのはそのうちのほんのわずかだったと言います。
アイデアの創出に関していえば、大量生産が質を高めるためのもっとも確実な道なのである。
と著者は述べています。
・新しい価値を生み出す人の「3つの特徴」
世界を創造する人物は、強い情熱や想像力を持っていること、自主的に考えることに加え、以下の3つの大きな特徴があると言います。
①「好奇心が強い」
②「まわりに同調しない」
③「反抗的」
代表的な人物でいえばアメリカ建国の父と呼ばれるベンジャミン・フランクリンやアルベルト・アインシュタイン、スティーブ・ジョブズなどが挙げられます。
こういった人たちは、失敗することへの恐れよりも、成功しないことへの恐れの方が強いと言います。
・先延ばしがオリジナリティを高める
一般的に、「先延ばし」はあまり良い印象を持たれていません。自己啓発の世界では生産性を落とす行為だとされています。
しかし創造性を高めるには先延ばしは有益とされます。
古代エジプトでは、「先延ばし」を意味する二つの異なる動詞があった。一つは「怠惰」「もう一つは「好機を待つこと」を表す言葉だった。
と著者は述べます。
ある課題に対して、特定の戦略に固執するのではなく、様々なパターンを考える時間を持つことで、より多くの解決策が生まれる可能性があるためです。
またこの先延ばしによる効果はレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」にも表れています。
ダ・ビンチは「モナ・リザ」を1503年に書き始め、何年間か描いては辞めるを繰り返し、晩年の1519年に描き終えています。
この作品を描き終えるのに実に16年の歳月がかかっているのです。
このことに対して批評家たちは、この間にしていた「光学研究」や、他の絵画のために制作が遅れたのではないかと考えていましたが、実はこの光学研究や、他の絵画の影響こそが、立体感のある「モナ・リザ」を完成させる秘訣だったのではないかと歴史研究家のウィリアム・パナパカーは述べます。
何かのアイデアを形にする際にはすぐに結論を出すよりも、一定期間を空けたり、他のことに着手したりして寝かせることがより良い結果を生むこともあるのです。
実践ポイント
⑴不安な時は、成し遂げたことを確認する
何か新しいことを始める際に、やっぱり無理だと感じて引き返したくなった時は、すでに成し遂げたことを考えてみると良いと著者は述べています。
その物事に対して、これまでどれだけ力を注いで何を達成したかもう1度確認することで、自信とやる気が湧いてきます。
⑵後悔したくないなら、行動を起こす
長期的にみて、後悔するのは行動を起こした上での失敗ではなく、行動を起こさなかったための失敗だと言われています。行動に起こしましょう。
感想・書評・学んだこと
科学的根拠を元に書かれている事実が多く、自分にもできるかもしれないと一歩前に進む勇気がもらえる一冊です。
リスクを回避する、リスク分散を行うことで新しいことにチャレンジしやすくなる状況を作り出せることも本書で学べました。
本書を読み、オリジナリティを追求していきたいと感じました。
最高の名言
納得できない既存のシステムに好奇心を持ってみると、大部分のことは社会的な要因に端を発しているということがわかってくる。ルールとシステムは人間が作っているのだ。このことを認識すると、現状をいかに変えられるかを考える勇気が生まれる。
仕方ないこと、あって当たり前だと思ってしまうことに「なぜ?」という好奇心を持つことが大切だと感じました。
決意が固まったら、バックミラーをのぞくのではなく、しなければならない残された仕事を強調し、前を見るほうがよい。
何かを始めようとするとき、過去に囚われるのではなく、今目の前にあることを大切にしながら自分の決意に対してまっすぐ向かっていくことの大切さを感じる一文です。